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世界標準の環境認証システム「LEED」が、都市の魅力を客観的に証明する

2020年11月25日

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 環境問題に対する社会の関心が高まる中で、企業や自治体が自身の取り組みを客観的に証明するために認証を取得するようになっています。数ある環境認証システムの中でも、建物の分野で世界的に最も普及しているのが「LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)」です。LEEDは建物にとどまらず、再開発や街づくりなどにも用いられるようになっています。なぜLEEDは、広い分野で活用されているのでしょうか。今回は、街づくりにおけるLEEDの動向を探ります。

インテリアから街づくりへと広がるLEED

 LEEDとは、建築や都市の環境性能を評価する認証システムです。外部からの客観的な評価により、企業や地域の価値を高めることができ、近年、世界で登録件数が徐々に増えています。

 この認証システムは、省エネルギーと環境に配慮した建物の普及を促進するため、アメリカのNPOであるグリーンビルディング協会(USGBC)により、1998年にスタートしました。アメリカでは、LEEDの取得に応じて免税や補助金などの優遇措置を設ける州もあることから広く普及。2020年11月時点で、アメリカ国内のLEED認証件数は260万件を超えています。

 LEEDはもともと、新築建物のインテリア設計と建設の環境性能を評価する「ID+C(Interior Design and Construction)」として出発しています。

 その後、環境に対する関心が高まる中で、新築建物全体を評価する「BD+C (Building Design and Construction)」や、既存建物全体を評価する「O+M (Building Operations and Maintenance)」という新たなカテゴリーが追加されてきました。その中には、戸建て向けの「HOMES」もあります。

 現在では、建物にとどまらず地域の開発を含めた「ND(Neighborhood Development)」や、さらに規模の大きい都市や自治体について評価を行う「Cities and Communities」までカテゴリーのラインナップは広がっています。

環境問題に対する姿勢が都市の競争力を決める

 インテリアというカテゴリーからはじまったLEEDが、都市においても用いられるようになったのには、どのような背景があるのでしょうか。それには、街づくりを取り巻く環境が大きく変化しているということが挙げられます。

 2015年9月に、持続可能な開発目標を定めた「SDGs(Sustainable Development Goals)」が国連で採択されました。2016年11月には、温暖化対策の新しい枠組みとして「パリ協定」が発効。社会は脱炭素化に向けて大きく動いています。これに伴い企業や自治体は、環境問題に対する姿勢を消費者や市民から厳しく問われるようになってきました。

 こうした流れは、都市においても例外ではありません。グローバル化によって人の移動や金融の流れがダイナミックになれば、都市や地域の競争力を高めて、人と資金を呼び寄せるために、環境問題や省エネルギーに対する取り組みを示すことが重要になっているのです。

 LEEDの認証を取得することで、誰の目から見ても明らかなデータをもとに都市の魅力をアピールできます。そのため、LEEDを街づくりに活用する事例も増えています。

日本でも増える建物や街づくりでの認証取得

 LEEDのメリットとしては、環境性能を証明できる点、継続的な改善が可能になる点などがあります。日本においてもLEEDに対する期待感は高まっており、件数も年々増加しています。2020年11月時点の認証件数は、166件です。

 LEEDは新築の建物だけでなく、既存の建物も対象にしています。日本では、築80年を超えるビルを改修する際に、エネルギー性能の優れた熱源・自動制御システムや、エネルギーの見える化や最適管理を行う「BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)」などを導入し、環境性能を高めて「LEED O+M(既存建築版)」の認証を受けた事例があります。ちなみにこのビルは、「120歳までテナント誘致可能な快適なオフィスビル」を目指しているとのことです。

 街づくりの事例としては、東京の世田谷区で街歩きを楽しめるコンパクトな再開発を行い、「LEED ND(街づくり部門)」の認証を取得したケースもあります。街づくりにおいてLEEDを取得することは、国内で地域の注目度を高める上でも、将来的に海外からの旅行客誘致を目的とした仕掛けとしても効果があると考えられます。

 世界に目を広げると、アメリカの大手IT企業がシリコンバレー付近に本社を建設する際に「持続可能性」を1つのテーマに掲げた例があります。同社はそれを自社の建物だけでなく、周辺地域の開発にも適用しました。建物だけでなく街づくりにおいてもLEEDの認証を取得することで、「環境問題に対して先進的に取り組む」という企業姿勢を世界に対してアピールすることに成功。さらに、近隣の不動産価値向上にも影響を与えています。

 環境性能の認証システムとしては、日本発の「CASBEE」も存在します。こちらにも、都市や街区を評価するカテゴリーがあり、一部の自治体は一定規模以上の建物に対してCASBEEの届け出を義務付けています。LEEDの利用を考えるなら、こちらも併せて検討するとよいでしょう。

 消費者や企業だけでなく、建物や街にも環境性能が求められる現在、街づくりにおける客観的な指標が必要とされるようになっています。今後も、環境問題に対する取り組みは世界的に加速していく見込み。「環境問題にどれくらい対応しているか」という指標は、建物の性能だけにとどまらず、地域経済の発展にもつながっているのです。LEEDのような環境認証システムは、さらに重要性を増すことでしょう。

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