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東日本大震災から10年、重要になる「自助」と「共助」

2021年3月10日

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 東日本大震災の発生から、明日で10年がたちます。時の流れとともに、災害への意識や対策も変化してきました。震災後に注目されるようになった「減災」という考え方もその1つです。未来のリスクに備えるために、私たちは過去から何を学んできたのでしょうか。今回は、東日本大震災を契機に変化してきた災害対策の動向を紹介します。

史上最大規模の震災がもたらした約17兆円の損害

 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)が発生したのは、2011年3月11日14時46分頃のことでした。

 震源域は、宮城県牡鹿半島の東南東130km付近で、岩手県沖から茨城県沖にかけて長さ約450km、幅にして約200kmに及ぶ断層が破壊され、その結果、日本の広い範囲で津波が発生しました。気象庁の観測によると、津波の高さは、福島県相馬で9.3m以上、岩手県宮古で8.5m以上、大船渡で8.0m以上にも達したといいます。

 マグニチュードは9.0を記録。これは国内観測史上最大規模であり、世界の中でも5本の指に入る大きさの地震といわれています。

 また、広域にわたる大きな揺れや津波により、10都県で約13万棟の家屋が全壊し、13都道県で約26万棟が半壊したという報告があります。震源地から遠く離れた首都圏も、交通網の麻痺による大量の帰宅困難者や、地盤の液状化現象といった被害が発生しました。ゆっくりとした長い間隔で揺れを繰り返す長周期震動は、関西地方にまで到達、高層ビルの内装破損やエレベータの停止などが報告されています。

さらに震災後は、電力がひっ迫したことから計画停電が実施され、企業活動や私たちの生活に影響を与えました。

こうした被害の総額は、約17兆円近くに上ると政府は推計しています。東日本大震災は、私たちの安全を脅かし、経済活動にも大きな爪痕を残しましたが、学ぶべきことも多くありました。

重要になる住民と企業の自助と共助

 日本では、東日本大震災後に災害対策の考え方が大きく変化しました。以前は、建物が地震で倒壊しないような設計や耐震補強工事の実施、防波堤や防潮堤の設置など、ハードウエアで被害を防ぐという「防災」の考え方が一般的でした。しかし、東日本大震災では、想定を超える揺れや津波によって、ハードウエアだけでは被害を防ぐことができませんでした。また、防波堤などへの信頼感から避難が遅れてしまったケースもあったといいます。そうした経験から、防災を中心とした対策だけでは限界があると考えられるようになりました。

 現在、防災に加えて重要になっているのは、被害を最小限にとどめるために行動をとる「減災」という考え方です。防災はハードによる対策が中心なのに対し、減災は情報共有、訓練といったソフトの対策が中心になります。防災は国が主体となる「公助」が中心となりますが、減災では住民や企業の「自助」、「共助」が重要になります。

 災害発生時には「防災対策だけで、すべての被害を防げない」という想いのもと、まずは自分の命を守るための行動をとる「自助」、その上でお互いを助け合い被害を最小限にとどめる「共助」が減災における基本的な考え方になります。その大切さを教えてくれる話があります。

 岩手県釜石市は、過去に津波に襲われた経験から、「想定にとらわれるな」「最善をつくせ」「率先避難者たれ」という「津波避難の3原則」の普及に取り組むなど、津波対策に力を入れていました。この教えが、東日本大震災の際に市内にいた多くの⼩中学⽣を救い、そのことは「釜石市の奇跡」としてさまざまなメディアに取り上げられました。

 現在では、防災、そして減災という2段階の構えが、日本の災害における対策の基本となっています。

強くてしなやかな国づくりのために「国土強靱化基本法」を制定

 東日本大震災によって大きな被害を受けた経験をもとに、政府は、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」(以下、国土強靱化基本法)を2011年12月4日に成立させ、同月11日に施行しています。

 国土強靱化基本法は、強くてしなやかな国づくりを進めていくことを目的とした法律です。ソフト対策をこれまで以上に重視し、ハード対策と適切に組み合わせた内容となっています。例えば、水害・津波対策については、河川・海岸堤防の整備、避難施設、避難路といったハード対策を整備。そこに、ハザードマップの作成・活用、避難訓練の実施といったソフト対策の組み合わせにより、災害被害の発生を最小限にしようとしています。

 国土強靱化基本法は、2020年度で期限を迎える予定でしたが、5年期間延長し、「防災・減災・国土強靭化のための5か年加速化対策」として、同年12月11日に閣議決定されました。同対策では、巨大地震に加え、近年激甚化する気象災害も視野に、「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速」「国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進」といった対策が立てられています。

 その中には、スーパーコンピュータを活用した災害の予測といった意欲的な対策のほか、送電網の整備・強化、避難施設や防災拠点への独立した電力設備の導入といったものもあります。独立した電力設備においては、再生可能エネルギーの活用や普及が進めば、サスティナビリティという面でも地域社会に恩恵をもたらしてくれます。

東日本大震災から10年がたちましたが、復興はまだ終わっていません。さらに、静岡県から宮崎県沖では、南海トラフ地震の発生も想定されています。持続可能な社会の実現のために、地震や津波をはじめとする自然災害に対して、具体的にどのような対策が講じられているのでしょうか。次回は、もし自然災害が発生したときに、私たちはどのように行動するべきか、平常時からできることを含めた防災対策について解説します。

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