ビジネスコラム

2兆円規模の基金設立!日本が本気で取り組むグリーンイノベーションとは

2021年4月21日

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 近年日本政府は、パリ協定の2℃目標、2050年カーボンニュートラルと、環境保護の分野で意欲的な計画を打ち出しています。しかし、これらの目標を達成するには、環境やエネルギーの分野における革新、いわゆる「グリーンイノベーション」が欠かせません。今回は、日本をはじめ世界で加速するグリーンイノベーションの動向について紹介します。

地球温暖化抑制に「イノベーション」は欠かせない

 2015年、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃未満に保ち、1.5℃に抑えるために努力することを目指し、国連で「パリ協定」が採択されました。同年、日本はパリ協定に基づき、「2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減、さらに、2050年には80%削減する」という目標を設定。2020年には、菅首相が所信表明演説で、「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言し、より意欲的な目標に取り組むことになりました。

 温室効果ガス排出量の80%削減という目標も、2050年カーボンニュートラルも、実現するのは簡単なことではありません。日本は2013年度に14.1億トンの温室効果ガスを排出しており、目標を達成するには、エネルギー以外のさまざまな分野で変革が必要だと考えられています。

 例えば、石油や石炭などの化石エネルギーではなく、環境に優しいエネルギーを全面的に利用する。自動車や電車、航空機、船舶などを、環境に負荷を与えない「ゼロエミッション」にする。あるいは、発電を非化石エネルギーに100%切り替えるといった大胆な転換が、複数の分野で必要だと考えられています。いずれの分野でも取り組みは進んでいますが、大量導入や本格的な普及へとつなげるには課題がまだ多く存在しているというのが実状です。

 また、地球温暖化の抑制に向け、日本だけが取り組んでいても意味がありません。温室効果ガスの排出量の3分の2を占めている新興国を中心に、世界各国が歩調を合わせて協力することが重要です。新興国では今後も、経済成長に合わせて排出量が増えていくと予想されており、そのため、環境やエネルギー分野での経済成長と両立するようなイノベーションが求められています。

「経済と環境の好循環」を目指す日本の戦略

 温室効果ガス排出量の80%削減やカーボンニュートラルの実現に向けてイノベーションを進めていくためには、コストの低減が課題になります。日本では過去に、イノベーションによって太陽光発電の普及拡大に貢献した体験があります。

 日本政府は、1970年代から30年以上にわたり、「サンシャイン計画」「ニューサンシャイン計画」などを展開し、太陽光発電技術の研究開発を後押ししてきました。そこで1,000億円以上の資金が投入された結果、太陽電池のコストを250分の1に下げることにつながったといいます。このイノベーションは、世界で太陽電池の導入が進むきっかけの1つとなったといわれています。

 近年、政府はグリーンイノベーションを促すために、かつてのように意欲的な動きを見せています。2019年には、「革新的環境イノベーション戦略」を閣議決定しました。これはエネルギー・環境分野でイノベーションを創出し、社会への実装を進めようというものです。同時に、「イノベーション・アクションプラン」には具体的なコスト目標も明記しました。

 2020年12月には、革新的環境イノベーション戦略の実行と、2050年カーボンニュートラルの実現のために、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(以下、グリーン成長戦略)」が策定され、同戦略では、環境対策を「産業構造の変換と成長を生み出す鍵」ととらえ、予算・税・規制・標準化・民間の資金誘導といった政策を通じ、2030年で年額90兆円、2050年で年額190兆円程度の経済効果を創出することを見込んでいます。

2兆円基金設立で3,000兆円の呼び込みへ

 グリーン成長戦略は、税制面では、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制、研究開発税制の拡充などによって民間投資を喚起。金融面では、市場のルール作りを通して投資の呼び込みを図る構えです。予算面では、「グリーンイノベーション基金」を設立。2兆円というかつてない規模の基金をもとに、イノベーションに挑戦する企業に対して10年という長期的な支援を行います。政府は、基金の資金を呼び水に民間企業の研究開発・設備投資を誘発し、さらには世界からESG投資(環境、社会、企業統治を評価基準に行われる投資)を国内の事業に呼び込みたいという思惑があります。

 グリーンイノベーション基金では、電化と電力のグリーン化、水素社会の実現、カーボンリサイクルなどのCO2固定・再利用が重点分野となっています。近年、水素を燃料に使用する自動車やバスの採用や、太陽光発電や省エネルギーなどによって建物内のエネルギー消費ゼロを目指す「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の推進がはじまっています。基金により、これらに続く新たな取り組みが期待されます。

 グリーンイノベーションに対する投資熱は、民間でも高まっています。2021年に入り、大手銀行などが相次いで環境関連のファンドを立ち上げています。また、世界では優れた環境技術を持つ企業の株価が高騰しており、米国の電気自動車メーカーが自動車業界で時価総額トップの座についたのは、象徴的な出来事といえるでしょう。

このように、官民の積極的な働きかけにより、グリーンイノベーションの創出に向けた下地が整いつつあります。今後、環境やエネルギーといった分野で産業構造に変革が起こり、コストの低廉化によって社会の実装も進んでいくと考えられます。この変革の時代に、温室効果ガスの排出量削減に向けて何ができるのか、検討してみてはいかがでしょうか。
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