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エッジデータセンターが後押しする未来の街づくり

2021年6月16日

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 現在のデータセンター市場を牽引しているのは、メガクラウド向けの大規模なハイパースケールデータセンターです。一方で、前回紹介したようなデータセンターの地方分散化という新たな潮流も存在します。今回は、発生したデータの情報処理を近隣エリアで行うエッジデータセンターの存在にスポットを当てます。エッジデータセンターとハイパースケールデータセンターはどのように結びつき、未来の街づくりにおいて、いかなる役割を果たすのでしょうか。

データが収集・生成された場所の近隣で情報処理

 未来の街づくりにおけるデータセンターを考える上で注目しておきたいのが、「エッジデータセンター」の存在です。

 エッジデータセンターに関連する概念としては、エッジコンピューティングがあります。エッジコンピューティングは、IoT(モノのインターネット)デバイスによって次々と収集・生成されるデータの情報処理を、デバイス自体や、その近くに設置されたサーバーで行う試みです。

 エッジデータセンターも、似た考え方のもとで構成されます。すべてのデータを大規模なデータセンターに集約するのではなく、データが収集・生成された場所の近くに小規模なデータセンターを置いて対応することを意図しています。

 ただし、規模や立地条件などの明確な定義があるわけではありません。エッジデータセンターにどのような機能を持たせるかによって、求められる要件が変わってくるからです。「企業や産業の集積地から15km圏内」にあるものをエッジデータセンターとしている例や、サーバーやUPS、冷却装置などをモジュール化したコンパクトなものをエッジデータセンターと呼んでいる例もあります。このため、インフラ環境の制約は従来のデータセンターとは異なる可能性もあります。

 日本政府は、IoTで全ての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報を共有して新たな価値を生み出す社会を「Society5.0」として提唱し、街づくりをはじめとする多くの分野で推進しています。その実現には、未来の街づくりに関してインフラ環境の制約がそれほどないエッジデータセンターの存在が重要な役割を果たすと考えられています。

 エッジデータセンターの活用が期待されている分野としては、IoTデバイスの情報処理や、路面情報をはじめとする自動運転で必要な各種データの情報処理、スマートファクトリーでのデータの収集や分析などがあります。

注目の背景にあるデジタルサービスの普及拡大

 エッジデータセンターが注目されるようになったのは、大規模なデータセンターへの一極集中が進んでいるという背景もあります。

 デジタルサービスの普及が急拡大する中で、国内のデータセンター市場をクラウド向けが牽引するようになっています。ある調査会社は、2021年中にクラウド向けデータセンターが国内市場の半分以上を占めると予測しています。特に、メガクラウドと呼ばれている大手ICTサービス事業者が存在感を増しています。

 近年、コロナ禍による一般家庭での在宅需要の高まりによって、インターネットを介した動画配信を定額で楽しめるサービスが一般的になりつつあります。また、ビジネスではリモートワークの推進によるWeb会議システムを利用したミーティングを行う機会も増え、データトラフィックに占める動画データの割合は増加傾向にあります。大規模なハイパースケールデータセンターは、その他のデジタルサービスに加え、これら大容量データを迅速かつ大量に情報処理するため必要とされ、増加し続けています。

 こうした膨大なデータへの対応は、大規模なデータセンターで集中して行ったほうが効率的であるとの見方も存在しますが、データセンターの一極集中は、万が一自然災害が発生した場合のリスクや電力供給網への負荷が大きいという懸念もあります。エッジデータセンターの役割には、大規模なデータセンターと組み合わせることでリスクを分散化し、データへの対応を柔軟に行う手段という側面もあり、ICT・通信の安定化を推進します。社会インフラとしてのデータセンターが担うICT・通信の安定化は、未来の街づくり実現へ貢献する重要な要素の一つなのです。

データの効率的な運用によって未来の街づくりを推進

 例えば、米国テキサス州オースティン市では、AIやIoT技術を活用して渋滞の解消や交通事故の予防につなげようという取り組みが行われています。これは、高精細カメラやIoTデバイスによって収集した交通情報などのデータを収集、分析して交通状況の改善に役立ててようという計画です。

 この取り組みでは、遠隔地のデータセンターで分析・予測を実施し、近隣のエッジデータセンターで認識や検知といった処理を行っています。交通上の異常やトラブルは人命に関わるため、データの収集場所から近いエッジデータセンターで迅速に処理を行い、対応しているのです。遠隔地と近隣という条件を上手に組み合わせ、データを効率的に処理するという手法は、今後、データセンターの分散化を推進する日本の街づくりにおいても参考になりそうです。

 国内でデータセンターの分散化が進み、ハイパースケールデータセンターとエッジデータセンターの補完関係が構築されれば、未来の街づくりの取り組みも加速していくものと思われます。また、今後、自動運転やスマートデバイスの普及拡大によって、エッジデータセンターの重要性はさらに高まるでしょう。未来の街づくりを考えるために、エッジデータセンターの動向に注視してみてはいかがでしょうか。

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