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デジタルコンテンツの真正性を証明できる「NFT」とは

2022年6月8 日

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 近年、デジタルアートが高額に取引されたことで注目集めているNFT(非代替性トークン)は、デジタルデータの真正性や所有権を証明できる新しい仕組みです。国内でもさまざまな企業が、新しいビジネスの創出につながる可能性を持つNFTに興味を示しています。ここでは、デジタル時代の資産管理の新たな形態とも言えるNFTの現状と、今後普及するための条件について解説します。

デジタル情報の真正性を示す「NFT」

 NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)は、仮想通貨の暗号化に用いられるブロックチェーン技術を利用して、データの真正性や所有権を示す、いわばデジタル証明書のことです。

 ブロックチェーン技術とは、取引に関するデータなどをチェーンのようにつなげることでデータの改ざんを防ぐ仕組みです。複雑な暗号アルゴリズムを取り入れていているため高いセキュリティを実現できるのが特徴で、「インターネット登場以降の最大の技術革新」と評価されることもあります。

 これまで、重要情報などを扱うシステムは、通常のインターネット網から切り離された非公開環境で運用し、さらにアクセスできるユーザーの限定によって、データを保護していました。しかし、記録の改変・改ざんが極めて困難なブロックチェーン技術の登場によって、公開された環境でも信頼性を保ちながらデータを運用することが可能となり、今後、さまざまな経済活動のプラットフォームを支える技術になる可能性を秘めています。

 NFTの特徴は、ほかのものと代替できない「非代替性」にあります。元来、デジタルコンテンツは、複製が容易なため、購入や所有した場合において、そのデータがオリジナルであることや、複製品ではないことを証明するのが困難でした。デジタルデータにブロックチェーン技術を掛け合わせたNFTは、そのコンテンツが他と代替できない「唯一無二のもの(非代替性)」であることを証明し、デジタル上における芸術作品などの所有権や真正性を示す「証明書」として機能します。そのため、あるデジタルコンテンツをAさんとBさんが保有している場合、たとえコンテンツのデータが同じものであっても、別のものとして区別することが可能となるため、従来のデジタルデータの在り方を根本から変える仕組みとして期待されています。

デジタルコンテンツだけでなく、実物資産の証明書にも対応

 NFTを利用したデジタルコンテンツを販売するには、国内外のNFT発行・取引サービス事業者が提供するマーケットプレイスに商品として出品する必要があります。

 現在、NFTのマーケットプレイスは、世界中に数多く存在しており、日本国内でも多数開設されています。2021年、世界全体のNFTにおける総取引額は約177億ドル(2兆円超)となっており、今後も成長する見込みです。

 NFTには所有者のほか、コンテンツの制作者の情報も記録されるため、コンテンツ消費における収益還元の不備を解消できる仕組みとしても期待されています。

 コンテンツの流通には、制作者が直接的/間接的にコンテンツを販売する「一次市場」と、制作者が関与しない、中古品販売やオークションなどの「二次市場」があります。一次市場では、コンテンツの販売によって得られた収益が制作費や印税などといったかたちで制作者に還元されますが、二次流通市場では売り手や販売業者に収益が独占され、制作者へ利益が還元されないことが問題となっています。

 NFTを利用することで、取引履歴の追跡と確認、権利者の報酬支払条件の埋め込みをデジタル上で管理できるようになります。これによって、二次流通で発生した収益を、クリエイターなどの制作者に還元することが可能になります。この仕組みが実現できれば、エンターテインメント業界全体にとって画期的な技術革新になるでしょう。

 また、NFTの対象は、デジタルコンテンツに限りません。物理的に存在する資産や権利にひもづけて活用することも可能です。絵画、不動産、貴金属といった実物資産や、入場チケットや会員権などの権利証としての利用も始まっています。そのほか、学位取得、成績証明、資格取得といった証明書類をNFTとして発行して対象者に配布するという例もあります。

セキュリティ確保と法整備が拡大のカギになる

 現在、NFTはまだ発展途上であり、これからさらに広まっていくには乗り越えるべき課題がいくつかあります。

 最も大きいのが法整備です。NFTは、すべての有形・無形資産を対象とする新しい取引商品となる可能性があるため、広範囲にわたる法整備が必要です。NFTとして流通する無形物の所有権や、売買取引に伴う会計処理や税務規定などについても、今後さらに議論を進めていく必要があります。

 また、販売や取引を担うマーケットプレイス事業者が果たす責任も大きなものとなります。情報の流出などのインシデントを未然に防ぐため、事業者の透明性や高いセキュリティポリシーが求められます。またNFTを利用することで、コンテンツの真正性や所有権は保障できますが、コンテンツのデータそのものを保護することはできません。NFTによる真正性の証明と並行して、コンテンツのデータの安全性を高めて複製や改ざんされないようにする仕組みも求められています

 NFTはデジタルアートなどの取引で大きな注目を集めましたが、今後はそれ以外のさまざまな分野での活用が期待されています。安全・安心に利用できるためのさまざまな課題を乗り越えることで、NFTは社会インフラとしての重要性を高めていくのではないでしょうか。

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