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「熱中症特別警戒アラート」の運用が開始。今求められる対応とは

2024年5月29日

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 2024年4月の平均気温は統計を取り始めて以来、最も高くなりました。このようなこともあり、昨年同様に暑い夏となることが予測されています。環境省は2024年4月24日から、新たに「熱中症特別警戒アラート」の運用を開始し、熱中症予防の周知徹底を図っています。今回は、猛暑により、年々危険度が増す日本の熱中症とその対策について解説します。

夏の炎天下だけではない「熱中症」

 地球温暖化による気候変動の影響により、2024年の夏も猛暑となる見込みです。猛暑で懸念されるのは「熱中症」の増加です。その初期段階として見られる症状は、めまい、吐き気、大量の発汗、筋肉痛や痙攣、体温の上昇などといったものが多く、これらは体温調節機能が適切に働かず、身体の代謝機能に異常が発生することで引き起こされます。さらに、重症化すると真っすぐに歩けない、水分補給ができない、呼びかけに反応しないなどの症状が現れ、その場合はすぐに救急搬送や医療機関での治療が必要になります。

 熱中症は以前、「日射病」や「熱射病」などと呼ばれてきました。日射病は、炎天下で直射日光を長時間浴びた場合など、大量に発汗することで体内の水分量が減少し、脱水状態となる症状です。脱水状態になると、血液の循環量が減少し、めまいや頭痛などの症状を引き起こします。また熱射病は、熱によって熱疲労が重症化し異常に体温が上昇する症状です。異常に体温が上昇すると、発汗が止まり皮膚は乾燥、体内で血液が凝固して内臓にも影響をおよぼす状態となります。なかでも不整脈の一つである頻脈や血圧の上昇、神経障害、昏睡状態という症状が現れたら非常に危険な状態と言えます。そのほかにも塩分補給不足による筋肉の痙攣、大量の発汗による熱疲労が起きたりするケースもあります。これらの症状を含め、現在は熱中症として扱われています。

 熱中症を発症したら、まず風通しの良い日陰や冷房の効いた屋内で休むことが推奨されています。そして意識がしっかりしているようであれば水分補給をする、体温が高ければ冷却剤などで身体を冷やす必要があります。とくに首筋や脇の下、鼠径部など血管やリンパ管が集中するような部位を冷やすことが肝心です。

 また、熱中症は夏の炎天下だけで発症するわけではありません。屋内にいても室温が上昇していることに気がつかずに熱中症にかかることがあります。春から夏における季節の変わり目など、身体が気温の上昇に慣れていない状態、つまり暑熱順化ができていない状態などに熱中症を発症する危険があります。さらに近年では、地球温暖化による気候変動の影響で、真夏だけでなく、春先でも発症する場合があるため注意が必要です。

猛暑が予測される2024年夏

 2023年7月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が「地球温暖化の時代ではなく、もはや沸騰化だ」と発言したように、2023年夏は地球温暖化の影響を受け、世界各地で異常な高温や熱波、山火事の頻発に見舞われました。日本に目を向けても、最高気温35℃以上の猛暑日は、兵庫県豊岡市で連続22日、福井県福井市で連続20日を記録しました。6月から8月までの3か月平均気温は、153の気象台など気象官署のうち半分以上の85か所で過去最高を記録、アメダス915か所のうち128か所で過去最高気温を記録しています。東京においては猛暑日が22日、30℃以上の真夏日は7月6日から9月7日まで連続64日と、いずれも過去最多を記録しました。“沸騰化”とまではいかなくても、確実に“暑い夏”となりました。

 気温が高止まりすることで、熱中症で救急搬送される人も増えました。総務省消防庁によれば、2023年6月は7,235人、7月は2018年に次いで過去2番目となる36,549人、8月は2008年以降で3番目に多い34,835人と公表しています。そして、2024年夏について気象庁は「全国的に気温が高くなり、猛暑日が増える」と予測しています。その原因として、2023年7月の本コラム「気候変動現象が引き起こす社会活動への影響」でも取り上げた、地球温暖化の影響と南米ペルー沖のエルニーニョ現象が続いていることを挙げています。2024年夏は太平洋高気圧の張り出しが強く、暖かく湿った空気が日本列島に多く流れ込みやすい状況となり、豪雨被害の多発や夏場の高温傾向などが危惧されています。現時点で2024年夏が2023年夏ほど暑くなるかは不確定ですが、暑くなる条件は揃っていると見られ、平均気温が高くなる確率は北日本で50%、東日本や西日本では60%、沖縄・奄美など亜熱帯地方で70%と気象庁では予測しています。

 エルニーニョ現象が続くことで、日本では暖冬となるケースが多くなっています。実際に2024年2月、東京で7年ぶりに20℃、3月31日には3月としては観測史上最も高い25.5℃を記録しました。さらに4月15日には新潟県三条市で32.5℃と今年初めての真夏日(沖縄を除く)となったほか、4月28日には福島県伊達市で32.8℃を記録するなど、4月から高温が多発しています。このような状況は熱中症の危険度が増している状況とも言え、福島県伊達市においては当日2人が熱中症の疑いで搬送されました。

「自助」による対策も

 2024年夏の猛暑が予測される中、年々危険度が増す熱中症の対策として、環境省は2024年4月24日から新たに「熱中症特別警戒アラート」の運用を開始するなど熱中症予防の周知徹底を図っています。これまで運用されている「熱中症警戒アラート」は、1日の最高暑さ指数33以上を予測した場合に発表されるものです。この暑さ指数とは、WBGT(ウエット・バルブ・グローブ・テンパレーチャー)と呼ばれる湿球黒球温度を摂氏で表した値で、人体の熱収支に与える影響の大きい湿度、日射・輻射など周辺の熱環境、気温といった3つを取り入れた指標です。この熱中症警戒アラートに対し熱中症特別警戒アラートは、暑さ指数がすべての観測地点で35以上となることが予想される都道府県を対象に環境省が発表するものです。

 また、厚生労働省は企業に対して、「職場における熱中症の予防について」という指導要綱の中で、熱中症対策としてWBGT値を活用するように通達しています。そのほかにも作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育、救急処置の措置をとり、安全配慮義務に違反しないために、各対策を講じることも求めています。企業は従業員に対し、労働安全衛生法や労働基準法などの法令に基づき、さまざまな配慮を行う必要があります。

 政府は熱中症特別警戒アラートの発表に伴い、自治体に対して冷房が効いた施設を「クーリングシェルター」として事前に指定し、開放することを求めています。このクーリングシェルターは、公共施設やショッピングセンターなどとされており、各市町村は夏に向けてそうした施設の指定を急ぎ検討しています。国内最高気温を観測したこともある埼玉県熊谷市は、クーリングシェルターとしておよそ20か所を指定する方針を示しています。開放するのは公共施設やスーパー、ドラッグストアなどの民間商業施設で、市の全域をカバーできるよう配置を考え協力を求めました。また、同市では「暑さに対応したまち」を柱の一つに掲げスマートシティを推進しており、「国土交通省スマートシティモデルプロジェクト」の先行モデルプロジェクトの一つとして選定されています。

 熱中症特別警戒アラート発表時は、熱中症対策として「公助だけでなく自助も必要」です。私たちも国や自治体からの公助、企業からの施策に頼らず、まずはそれぞれができうる「自助」で暑さを乗り切ることが重要な課題となるのではないでしょうか。

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