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ビジネスコラム

気候変動リスクの情報開示を企業に促す「TCFD」とは

2019年9月18日

 気候変動による経済的損失が危惧される中、金融業界をはじめ多くの企業が支持を表明し、注目を集めている組織が「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」です。TCFDは、投資家向けに気候関連情報の開示フレームワークを提示しています。開示フレームワークは、投資家が企業を評価するためのものではありますが、企業にとっては脱炭素社会における経営戦略を考える上でのツールとしても活用することができそうです。今回は、TCFDとは何か、そして、企業が対応するためのポイントについて紹介します。

気候変動リスクへの危機感から生まれたTCFD

 TCFDとは、企業に気候変動の影響を開示するように求める国際組織「気候変動関連財務情報開示タスクフォース」のことです。

 気候変動により、金融の安定性が損なわれるのではないかという危惧は以前から指摘されていました。例えば、洪水、暴風雨などによって経済が麻痺する、あるいは、脱炭素経済へと移行する中で化石燃料への依存度の高い分野の金融的な価値が下落するといったリスクが考えられます。一方で、そうしたリスクについて、どのように企業が戦略や財務計画と関連づけ、取り組んでいるのか明らかになっていませんでした。

 そうした状況を打開しようと、2015年に開催されたG20では、金融安定理事会(FSB)に対して、気候関連問題のレビューを実施するように求められました。それをきっかけに、民間主導でTCFDが設置されることになりました。

 TCFDのメンバーは、銀行や保険会社、年金基金などの金融系企業・団体と、エネルギー、運輸、素材などの非金融系企業に属する 32 名で構成されています。2019年3月14日時点で、48ヵ国の537社、政府・国際機関・民間団体などの65団体がTCFDへの賛同を表明しています。

 日本は、62社が支持を表明しており、その内、非金融企業が32社と多いのが特徴です。2018年7月には。環境省も賛同に名乗りをあげています。

TCFDに企業はどう対応すればいいのか

 TCFDが企業に求めているのは、気候変動による財務への影響の開示です。それに企業が対応するためには、2℃目標などの気候シナリオをもとに、自社の気候関連リスク・機会を評価。それを経営戦略・リスク管理に反映したうえで、その財務上の影響を開示しなければいけません。

 ただ、TCFDのために特別な報告書を作成する必要はないようです。自社で既に発行しているアニュアルレポートやCSRレポートといった年次財務報告の中に、気候関連の財務情報を盛り込む形で開示する方法が推奨されています。

 TCFDは開示する情報として、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」という4つのフレームワークを提示しています。

 なお、すべての企業にこの4つの開示を求めているわけではありません。「ガバナンス」「リスク管理」については、投資家が企業の財務上・操業上の結果を評価する際に必要となるため、すべての企業に開示を推奨しています。

 一方、「戦略」「指標と目標」については、気候関連情報の重要性が高い企業、売上高が1,000億円を超えるような企業のみ、開示を推奨しています。

TCFDで開示すべき情報とは

 TCFDのフレームワークにもとづいて、どのような情報を開示すればよいのでしょうか、そのポイントを紹介します。

 まず経営者のコミットメントが重要になります。そのため、「ガバナンス」において、監督体制や経営者の役割について報告します。気候変動のリスクと機会に対し、取締役会の監督体制がどうなっているのか、気候関連の担当役員や委員会等が設置されているか、経営者が気候関連課題の情報を受けるプロセスなどを開示します。

 その上で、経営者が気候変動のリスクと関連付けて、「戦略」が策定されているかという点が問われます。短期・中期・長期のリスクと機会、事業・戦略・財務に及ぼす影響を開示するほか、2℃目標などの気候シナリオを考慮した上で、組織戦略の強靭性が担保されているのかという点も重要になります。

 業務を遂行する上での、「リスク管理」も明らかにしなければいけません。そこでは、気候関連のリスクや機会がもたらすビジネス・戦略・財務計画への影響が焦点になります。具体的には、リスク管理のプロセスや気候関連リスク評価の状況、優先順位付け、また、組織全体のリスク管理への統合状況といった情報が該当します。

 戦略・リスク管理に用いられている「指標と目標」は、投資家が企業を評価する際に欠かせないものです。TCFDが推奨するものとしては、低炭素商材の収入に関する指標、温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告の基準である「GHGプロトコル」によって算出した排出量、気候関連の目標、製品・サービスのライフサイクル目標などがあります。

 こうしたフレームワークに基づいて開示を行うことで、企業にとっては投資家との対話が促進されるのはもちろん、自社の気候変動のリスクや機会を整理することができ、脱炭素社会の実現に向けた経営の強化にもつながることでしょう。次回は、TCFDについて、世界各国はいかに対応し、日本企業ではどのような取り組みが生まれているのか、その最新動向を紹介します。

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