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ビジネスコラム

猛暑に負けない!企業に求められる熱中症対策とは?

2025年06月25日

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熱中症警戒アラートが既に各地で発表されるなど、2025年夏も暑い夏となりそうです。こうしたなか、労働安全衛生規則が改正され、2025年6月1日より職場での熱中症対策が義務化されました。今回は、企業に求められる具体的な対策や進化する熱中症対策などについて解説します。

広がる熱中症の危険と企業に求められる対応

 厳しい暑さが続く日本の夏。毎年、熱中症によって体調を崩し、救急搬送される人が多く、メディアでも頻繁に取り上げられています。熱中症とは、暑くて湿気の多い場所などに長時間留まることで、発汗による体温調節ができなくなり、体内に熱がこもった状態のことを言います。ひどくなると命にかかわることもあり、特に夏の暑い時期には、日陰の少ない屋外や、冷房設備のない屋内など湿気の多い場所にいると、気づかぬうちに発症することがあります。

 熱中症のリスクを減らすには、屋外での作業やスポーツをできるだけ避け、屋内では冷房を適切に使用することが大切です。しかし、建設現場や農作業のように、暑い中でも作業を続けなければならない仕事もあります。そうした現場では、作業を完全に止めることは難しいのが現状です。連日猛暑が続く近年、職場でも熱中症による体調不良を訴える人が増えています。厚生労働省のデータによると、4日以上の休業、あるいは重篤な熱中症の被害者は、2020年959人、2021年561人、2022年827人、そして記録的猛暑となった2023年には1,106人へ増加しています。このような状況は、企業が熱中症対策をさらに強化する必要があることをはっきりと示しています。

 2024年4月、熱中症の予防をより多くの人に呼びかけるため、環境省は「熱中症特別警戒アラート」の運用を開始しました。熱中症特別警戒アラートは、1日の暑さ指数がすべての観測地点で35以上となることが予測される都道府県を対象に発表されるものです。この暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)とは熱中症を防ぐために用いられる指標で、1954年に米国で提案され、現在世界中で活用されています。湿度・日射など熱環境・気温といった3つの要素から算出され、人の体がどれだけ暑さのストレスを受けているかを表します。熱中症特別警戒アラート発表された際、地域住民だけでなく、企業も特別な対策を講じることが強く求められます。

 さらに2025年6月1日より、厚生労働省の労働安全衛生規則が改正され、企業における熱中症対策が義務化されました。対象となるのは、WBGT28または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間以上作業を行うケースが該当します。この基準に該当する職場は、義務化された熱中症対策を速やかに実施し、従業員の安全確保に努める必要があります。

加速する企業の熱中症対策

 暑さや湿気の多い環境で働いているときでも、熱中症の初期症状に気づくのは簡単ではありません。たとえば、手足の痙攣、立ち眩みやめまい、吐き気、異常な汗、または反対にまったく汗をかかない状態などは、熱中症の初期症状や予兆である可能性があります。一緒に働く人の中に、イライラしている、ふらついている、声をかけても反応が遅い、ぼんやりしているといった、いつもと違う様子が見られた場合は、見逃さないことがとても大切です。実際に職場で起きる熱中症の多くは、こうした初期症状に気づかず放っておいたり、対応が遅れたりすることで重症化しています。

 作業中に熱中症になる人が増えていることを受けて、厚生労働省は2021年4月、「職場における熱中症予防対策要綱」を策定しました。同要綱では、WBGTの活用が重視されており、WBGT基準値を超えるおそれがある作業場所では、機械などから発する高温の熱を遮る遮蔽物を設置すること、屋外の高温多湿作業場では直射日光や周囲の壁面・地面からの照り返しを遮る屋根を設置すること、屋内の高温多湿作業場所では適度な通風や冷房設備を導入することなどの対策を求めています。また建設現場などでは、冷房の効いた休憩室や日陰などの涼しい場所に休憩スペースを設けること、水分補給のための飲料水をしっかり用意すること、そして体を冷やすための水風呂やシャワーを設置することなど、設備面での対策も求めています。

 こうした政府の取り組みに対し、多くの企業が熱中症対策を加速させています。特に昨今、人手不足が深刻な建設現場などでは人材の確保が急務であり、熱中症や怪我といった労働災害を発生させないようにすることは極めて重要です。従業員が安心して働くことができる環境を整えることが、新たな人材確保につながり、結果的に企業の持続的な成長を支える基盤になっていくと考えられています。そのため健康経営の観点からも、安全かつ衛生的な職場環境を保つことが強く求められています。企業は、ただ法令を遵守するだけでなく、従業員が安心して働くことができる環境を自ら作っていくことが、これからの時代に欠かせない経営のあり方だと言えるのではないでしょうか。

進化する熱中症対策

 熱中症を防ぐために、現在さまざまなアイデアや製品が登場しています。たとえば、休息スペースにはWBGT値を下げるために、簡易冷房を設置したブースや直射日光を防ぐテント・シート、さらに冷風機や送風機などの設備が取り入れられています。作業着では、バッテリーで動くファン付きのジャケットや、保冷剤を収納できるポケットが付いたベスト、冷却機能付きヘルメットなどが広く普及しています。また、汗をすばやく吸収・蒸発させ、気化熱で体を冷やす冷感タオルなども、業務用だけでなく、スポーツや日常生活でも使われています。

 最近では、IoTを活用した熱中症対策サービスも増えています。建設現場や工場では、作業現場と本部、担当者が連携できるチャットツールのほか、作業者のウェアラブルデバイスにWBGTを計測するセンサーを搭載し、スマートフォンなどと連携してデータを表示するシステムも登場しています。体温や心拍数などのバイタル情報をリアルタイムに集め、本人が異変に気づかない場合でも、クラウドでデータを管理し、自動でアラートを発信するようなサービスもあります。企業のDXが進むなか、現場の環境や作業者の状況を把握し、熱中症から守るためにIoTを活用する事例は確実に増えています。また、気象庁や気象情報サービス会社がSNSを通じて個人へ警戒情報を届けるサービスも広がっています。

 6月1日に職場の熱中症対策が義務化されたことを受け、企業には自社事業の熱中症リスクを改めて見直し、抜本的な改善を図ることが求められています。たとえば、体調や環境の小さな変化を見逃さないようにする、熱中症のリスクを減らすために業務の進め方を見直す、さらに職場内で異常を報告する体制や、病院への連絡・搬送する体制を整えるなどの対策を会社全体で取り組む必要があります。そして重症化する前にすばやく対応できるように、経営層がこうした対策に積極的に関与することが強く求められています。

 日本気象協会の長期予報によると、2025年夏も、2023年のような記録的な猛暑にはならないものの、平年より暑くなる見込みです。厳しい残暑も予想されているため、本格的な暑さが始まる前に、「暑い夏」を乗り切るための準備を早めに進めることが大切です。私たち一人ひとりが自身の健康を守る意識を高め、万全の備えでこの夏を安全に乗り越えていきましょう。

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