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ビジネスコラム

小倉勇人氏に聞く①「クラブフィッティングは対話から、そしてその先へ ― 本当の価値を届けるために」

2025年07月23日

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 ゴルフの魅力は、道具選びがスコアや楽しさに直結する点にあります。クラブフィッターの小倉勇人氏は、「自分にぴったりのクラブで心ゆくまでゴルフを楽しんでほしい」との信念のもと、ゴルファーの悩みへ真摯に寄り添い、最適なフィッティングで課題解決に情熱を注いでいます。前編となる今回は、その卓越したフィッティング手法の根幹にあるカウンセリングやアフターフォロー、ゴルフに対する深い洞察などについてお話を伺いました。

【プロフィール】
小倉 勇人(おぐら はやと)
1978年生まれ、東京都出身。学生時代からゴルフを始め、某有名ゴルフ誌の編集者としてキャリアをスタート。その後、ゴルフ雑誌やWEBを中心に編集・執筆活動を行いながら、クラブの専門知識とフィッティング技術を深め、クラフトマン、クラブフィッターとしても活躍する。現在は「株式会社リルガレージ」主宰として、アマチュアゴルファーが「自分に合ったクラブ」でゴルフを最大限に楽しめるよう、日々情熱を注いでいる。

共感を生むカウンセリングの極意

――クラブフィッターとしてお仕事をされる中で、特に大切にされていることや、心がけていることについて教えてください

 まず、あらためてクラブフィッターとは何かを説明させていただきますと、ゴルファーのスイングや体格、目標に合わせて最適なゴルフクラブを提案・調整する専門家です。クラブフィッティングでは、弾道測定器を用いて弾道データを計測し、ヘッド、シャフト、グリップといったクラブの各パーツを分析・調整します。単にクラブを選ぶだけでなく、スイングの癖や理想のゴルフを考慮し、個々のゴルファーに最適なクラブセッティングを導き出す役割を担っています。

 そのうえで私が大切にしているのは、「ゴルフで何をしたいか」をはっきりさせることです。そのため、最初にカウンセリングを行い、お話をしっかり伺います。私が特に意識していることは、「この方が一番大切にしていることは何か」という点を掘り下げることです。たとえば、「良いショットを打ちたい」「スコアを伸ばしたい」「周りにカッコよく見られたい」など、人それぞれゴルフに対する目的は異なります。だからこそ、まずは目的を明確にし、それに合わせた対策を考えるよう意識しています。そして、その方が思い描くゴルフを実現できるようサポートし、一人ひとりが気持ちよくプレーできる環境を整えていく。そしてラウンドを終えたときに「今日は本当にゴルフが楽しかった」と感じていただく、そんなフィッティングをめざしています。

 プロゴルファーや技術の高い方は、「何をしたいか」が明確ですので、それを実現できるクラブを組み上げるだけでご満足いただけることが多いです。一方、アベレージゴルファーの多くは、「何をすればいいか」がご自身ではよく分からないままになっています。ですからカウンセリングでは、「今のスイングを変えずに、やりたいことを最大限実現できるクラブを求めているのか」、それとも「練習を重ねて技術を高めたうえで、それに合ったクラブを使いたいのか」といった点をしっかり確認します。人によって考え方やめざす方向性は異なるため、その部分を取り違えないよう特に注意しています。だからこそ、フィッティングの前段階として丁寧に話を伺うカウンセリングが、とても重要なステップになるのです。

 その中で多い要望が「できるだけ楽に上手くなりたい」というもの。それもゴルフを楽しむうえで一つの“真理”だと私は思っていますので、そういった方には、ご自身のスイングやスタイルを大きく変えずに、できるだけ良い結果が得られるクラブを提案するようにしています。一方で、「70台のスコアをめざして毎週練習しています」というような、明確な目標をお持ちの方には、「どのような技術を磨きたいのか」「その目標に合うクラブとはどのようなものか」といった、より専門的な視点で提案しています。

 大切なのは、ご自身が納得してクラブを使うことです。不安を感じたままスイングしますと、動きにぎこちなさが出てしまい、良いショットにはつながらないものです。そのため、「今のスイングはこういう特徴があって、今ここに課題があります。この部分が改善されたときに、このクラブがしっかりマッチして、良いショットにつながりますよ」といったように、将来を見据えたうえで、スイングとクラブの連動性を意識した説明を心がけています。

クラブを渡したその先にある、本当のフィッティング

――フィッティングで選んだクラブを長く愛用し、常にベストなパフォーマンスを発揮するためには、どのような点が大切だとお考えでしょうか

 私はいつも完成したクラブを手渡しする際、「ここからが、本当のスタートです」とお伝えしています。ゴルフクラブは、一度購入すれば終わりという単なる“道具”ではありません。ゴルフを続けていく中で、スイングが自然と変わること、「もっとこういうショットを打ちたい」といった新たな目標が生まれることはよくあります。そうなりますと、せっかくお金と時間をかけてフィッティングしたクラブでも、少しずつ合わなくってしまう可能性があるのです。ゴルフというスポーツは、まるで“生き物”のように日々変化します。それに合わせて、クラブとの関係性も常に進化していくべきものだと考えています。

 だからこそ、クラブをお渡しした後は必ず「実際に使ってみていかがですか? 率直な感想をお聞かせください」と、良い点・気になる点を細かく伺うようにしています。使用後に見えてくる課題は、次なる調整のヒントとなり、微調整を重ねることで、よりその方にフィットした理想のクラブへと導くことができるからです。このような、継続的なアフターフォローこそが、フィッティングの本質であり、長くゴルフを楽しんでいただくために欠かせない要素だと私は考えています。

フィッティングの際に最高の打感を得られたクラブを、「これなら大丈夫」と安心して長く使い続けていただけるように、お客様のスイングの特徴をもとに「このヘッドとシャフトの組み合わせこそ、理想のショットをサポートするベストな選択です」と、そのクラブの持つ可能性と相性の良さをしっかりお伝えします。ある意味“刷り込み”とも言えるでしょう。

 なぜなら、繰り返しにはなりますが、どれほどフィットしたクラブであっても、使う方に少しでも疑問や不安が残っていれば、無意識のうちにスイングが乱れ、結果としてミスにつながってしまいます。クラブを使う方がそのクラブに全幅の信頼を持ち、自信を持ってスイングできること。それこそが、最高のパフォーマンスを引き出す鍵だと思っています。

フィッティングの真の価値

――年齢や体力の変化などにより、現在使用しているクラブが合わなくなってしまうケースはよくあるのでしょうか。

 もちろんそういうケースはよくあります。実際の例として、コロナ禍で筋トレに励んで筋肉量が増えたことで、以前使っていたクラブが合わなくなったという方もいらっしゃいました。また体のどこかを痛めた場合も同様で、体が変われば、それに合ったクラブも当然変わってくるものです。

たとえフィッティングで、スイングにぴったり合うクラブを選んでいたとしても、ゴルファー自身の体力や考え方は時間とともに変化していきます。だからこそ、継続的にフィッティングを行うことがとても大切なのです。もし今後も同じクラブを使い続けたいという場合には、「このクラブはこういう特徴があるので、それに合った使い方をすれば良い結果が出せますよ」と丁寧に説明し、納得いただくよう努めています。

 ご自身では、「何が変わってきてズレが生じているのか」が分かりにくいことが多いため、その点を明確にし、ニーズに合ったゴルフの実現をサポートしたいと考えています。だからこそ、クラブを組み立ててお渡しする段階は、あくまでもフィッティングの“スタートライン”に過ぎません。実際に使っていただいたうえで、さらに調整を行うことこそが、フィッティングの真の価値だと思っています。

 一度クラブを組んでしまえば、そう何度もオーダーしていただけるものではありませんので、ビジネスとしては非効率な面もあります。それでもクラブフィッターを続けているのは、ただただクラブという道具が心から好きだからにほかなりません。関わりが細くても長く続いていく関係こそがクラブフィッターとして果たすべき役割だと考えていますし、それが何よりの喜びです。

 もちろん「こういうクラブが好き」といった感覚は尊重します。そのうえで、データやこれまでの経験に基づいた診断を行い、その感覚に合った最適なクラブをご提案しています。本人も気づいていない潜在的なニーズやゴルフ上の課題を丁寧に引き出すことで、単にクラブをお渡しするだけでなく、ゴルフの本質的な上達につながるきっかけを提供できると考えています。

7/30公開の「後編」につづく

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