2011年11月10日
ICT装置用高電圧直流給電システムの販売開始について
~ 「省エネ・安心・安全」世界最先端の次世代給電システム ~
株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長 沖田 章喜)は、次世代の電力供給方式として期待されており、世界に先駆けて開発に取り組んできた高電圧*1直流(High Voltage Direct Current: HVDC)給電システムを、2011年11月14日より販売開始します。
本システムは、データセンター等におけるICT機器への給電電圧を約380Vにすることで、多くの実績を有する従来の通信用直流給電システムの高い品質を維持しつつ、交流給電システムと比較して消費電力量を最大20%削減、給電信頼度10倍向上、電源スペース最大40%削減の効果が期待できるものであり、交流給電システムと同等レベルの費用で構築が可能です。
クラウドコンピューティング用途を中心に、2015年にはデータセンターにおけるUPS市場の10%相当の売上を目標として展開していきます。また、国際標準化にも継続して取り組み、スマートグリッドなどへの更なる領域拡大も目指していきます。
図1:HVDC整流装置
1.背景
近年のICT装置の高性能化や高密度化、大量稼動に伴う高発熱化により、データセンターの消費電力量は今後ますます増加すると予想されています。
NTTグループでは、「直流給電推進の取り組み方針」*2の一環として、地球環境に優しい電力供給方式である直流給電システムの更なる研究開発を進めております。その中においてHVDC給電システムは、2008年よりNTT環境エネルギー研究所と当社が共同で開発をスタートさせ、他のパートナー企業との連携を重ねながら試作品の製造・評価を進めてまいりました。
2.HVDC給電システムの提供開始について
NTTファシリティーズは、試作・評価を重ねながら、高効率化の実現などによる省エネ性、コネクタ構造やアーク防止などに関する安全性について更なる改良を施し、HVDC給電システムの提供を開始いたします。
HVDC給電システムの構築にあたっては、電源装置からICT装置までシステム全体でのソリューション提供が重要であり、キーデバイスである電源装置(HVDC整流装置)をはじめとし、蓄電池、HVDC分電盤、HVDCコンセントバー、電源プラグ等が必要となります。NTTファシリティーズでは、給電システムに関する物品販売、設計、施工、保守・運用まで幅広くサービスを提供いたします。
- HVDC整流装置
交流から直流に変換する装置で、95%以上の高い電力変換効率を有します。19インチラック型のサイズで装置容量は最大105kWとなっています。充電器兼予備器1台を含めて15kWの整流器ユニットを8台搭載し、整流器ユニットが1台故障した場合やユニット増設時においても負荷への給電を継続しながらホットスワップで交換することが可能です。■表1:整流装置の仕様
項目 仕様 備考 入力電圧 交流 三相3線200V 出力電圧 直流 383V 出力電流 装置最大:274.4A(39.2A×N) N:整流器ユニット台数 出力容量 装置最大:105kW(15kW×N) 最大変換効率 95%以上 ユニット搭載可能台数 8台(内1台は充電器兼予備器) N+1台構成 寸法(幅×奥行き×高さ) 695mm×1,000mm×2,000mm 質量 500kg(整流器ユニット8台含む) 整流器ユニット 出力電流 39.2A 出力容量 15kW 寸法(幅×奥行き×高さ) 480mm×500mm×135mm 質量 20kg - HVDC分電盤
HVDC整流装置からの直流出力を分岐する装置で、分岐回路に過電流や短絡などの異常が発生したときは速やかに切り離し、他の回路へ影響を及ぼさない機能を有しています。分岐回路に搭載する保護素子は、MCCBとヒューズの2つのタイプがあり、MCCBタイプ分電盤は近日販売開始予定です。■表2:HVDC分電盤(ヒューズタイプ)の仕様
項目 仕様 出力分岐数 20分岐×2系統 出力許容電流 1分岐:30A 寸法(幅×奥行き×高さ) 695mm×1,000mm×2,000mm 質量 540kg 図4:HVDC分電盤(ヒューズタイプ)
(NTT環境エネルギー研究所 開発品) - HVDCコンセントバー・電源プラグ
直流は、交流に比べて遮断時にアークが切れにくいという特徴があります。HVDC給電システムにおいては、専用のコンセントバーと電源プラグを富士通コンポーネント株式会社(代表取締役社長 石坂 宏一)と共同開発し、機器の運用作業に必須となる安全性と簡易性を確保した性能と構造を実現しています。
(2010年11月9日ニュースリリース:http://www.ntt-f.co.jp/news/heisei22/h22-1109.html)
具体的には、ICT機器などの電源プラグをコンセントに接続し、プラグ未挿入時は動作しない機械的スイッチをON側へスライドすることで内部の接点が閉じ、電流が流れるとともに電源プラグの抜け防止ロックが作動する構造としています。電源プラグを抜く際は、機械的スイッチをOFF側へスライドすることで、内部の接点が開き、アークを遮断し、ロックを解除するため、外部へアークが発生することなく、作業者・保守者が安全に挿抜作業を行なうことができます。図5:HVDCコンセントバーと電源プラグ
■表3:コンセントバーの仕様
項目 仕様 出力分岐数 10分岐 出力許容電流 1分岐:10A(4kW) 1本:25A(10kW) 寸法(幅×奥行き×高さ) 600mm×67mm×44.4mm 質量 2.4kg
3.今後の展開
HVDC給電システムは、主としてクラウドコンピューティングサービスを提供するデータセンターでの適用を目指して展開を図っていきます。当社では交流給電システムに代わるシステムとして、2015年度にはデータセンターにおけるUPS市場の10%相当の売上を目標としています。
一方で、HVDC給電システムを普及させるためには、国際標準化が重要であるという認識のもと、IEC、ITU-T、ETSI*3などの国際標準化機関での活動もNTT環境エネルギー研究所と協力し、並行して進めています。標準化、規格化の動きに合わせて各ICT装置ベンダと連携し、HVDC対応装置のラインアップも揃いつつありますが、更なる拡充をしていきます。
また、NTTデータ先端技術株式会社(代表取締役社長 三宅 功)が提供するDC380VをDC12Vに変換するサーバラックシステムのソリューションも含めて、NTTグループ一体となった適用領域の拡大、システム全体の普及促進に取り組んでいきます。
将来的には、データセンターなどにおける導入だけでなく、太陽光発電システムなど直流で発電する再生可能エネルギーを直流のまま連系したスマートグリッドへの適用も視野に入れた、幅広い領域でのご提案を目指していきます。
NTTファシリティーズでは、地球環境に優しい次世代の直流給電システムの普及促進に向けて、更なる開発や普及活動を展開していきます。
用語説明
- *1 高電圧
- ICT分野において、交流の給電電圧はAC100V,AC200Vが使用されています。直流の給電電圧は、電気通信用として世界的にDC48Vが使用されています。これに対して、DC300~400V程度となる高い電圧範囲を高電圧直流と呼んでいます。 なお、国際的には、IECにてDC1500V未満を低電圧と定義しています。また、日本国内における電気設備の区分としては、「電気設備に関する技術基準を定める省令(経済産業省令)」によりDC750V以下を低圧、DC750Vを超えDC7,000V以下を高圧と定められています。
- *2 NTTグループの「直流給電推進の取組み方針」について
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地球温暖化防止活動の一環として、NTTグループは省エネルギーに貢献できる直流給電の導入・普及に向けた施策を推進するとともに、新規技術(高電圧直流給電技術)の開発着手することを内容として報道発表しています。
関連URL:http://www.ntt.co.jp/news/news08/0806/080605a.html - *3 IEC、ITU-T、ETSI
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IEC(International Electrotechnical Commission):国際電気標準会議
ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector):国際電気通信連合電気通信標準化部門
ETSI(European Telecommunications Standards Institute):欧州電気通信標準化機構
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- NTTファシリティーズ 経営企画部広報室 MAIL:pr@ntt-f.co.jp
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