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高発熱、高密度化、データセンターで何が起きているのか

2017年11月1日

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 「データセンター」は、ICTの活用が大前提となった現在の企業活動において、重要なシステムやデータを保管するインフラとしてなくてはならない存在となっています。前回は、データセンターが普及した背景を、利用メリットとともに紹介しました。

 そのデータセンターでは今、ICTの技術革新による電力量増加と地球環境保護の観点から、省エネ化が求められています。しかし、大量のサーバー群が設置され、膨大な電力が必要となるデータセンターで、それは容易なことではありません。電力消費量の削減と安定稼働のジレンマに悩むデータセンターが、省エネという課題に対してどう向き合っていけばよいのかを考えます。

パリ協定発効でうねりを増す省エネ化の波

 今、データセンターを取り巻く環境が変化しつつあります。

 最大の変化といえるのが、地球温暖化に対する問題意識の高まりです。2015年にフランスで開催された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」で、「パリ協定」が採択。この協定は、経済・社会の持続可能な発展に向け、地球温暖化対策のルールを取り決めたもので、世界の平均気温上昇を2度未満に抑えるという目標が掲げられました。

 パリ協定は2016年11月に発効され、日本も批准しています。今後、日本をはじめとした批准国には、協定で定められた目標やルールを前提とした、環境・エネルギー政策が求められるようになります。こうした背景をもとに、企業にはさらなる環境問題への取り組みが求められるようになっており、それはデータセンターにおいても例外ではありません。

 データセンターは多くの電力を消費しており、それはオフィスビルと比べても明らかです。情報サービス産業協会によると、2014年度の消費電力量はオフィス部門が3億kWh、それに対してデータセンター部門では11.1億kWhと4倍近くにも達しています。

「高密度化」で冷却が追いつかない事態に

 データセンターの省エネ化は、大量のICT機器が設置されていることもあり、簡単なことではありません。その背景には、インターネット上でやり取りされるデータ量の爆発的な増加があります。

 総務省の「平成29年版情報通信白書」によると、ブロードバンドサービス契約者がダウンロードしたデータ量の総数は2014年以降に急速に伸び、直近(2016年11月)では前年同月比で52%増加しています。モバイル通信でやりとりされるデータ量も1年で約1.3倍のペースで拡大し、ダウンロードしたデータ量の総数は前年同月比35%増という調査結果が公表されています。

 さらに、2020年には、次世代移動通信規格「5G」が実用化されようとしています。5Gは、10Gbps超の通信速度でLTEの約1,000倍にもなる大容量化を目標とした規格で、モバイル通信におけるデータ量を大幅に拡大することでしょう。

 それだけでなく、2010年代から実用化されはじめたIoTやAI(人工知能)も、ここ数年で導入が本格化。今後は、IoTやAIを活用したシステムやロボットなどが次々と登場していくと考えられます。それに伴いデータ量はさらに増えていくことが予想されます。

 爆発的に増加するデータ量を処理するために、近年、サーバーは高性能になり、年々小型化しています。これにより、データセンターには、ICT機器が非常に高い密度で設置された、いわゆる「高密度化」した状態となっています。

 それにより、データセンターの単位面積あたりの発熱量も増加し続けています。熱を持った大量のサーバー群をそのままにしておけば故障や誤作動につながる危険性が増すため、安定的に冷却する必要があります。

 そのため、データセンターでは冷却に関わる費用が上昇しています。高密度かつ高発熱化した大量のサーバー群を冷却するためには、空調機を増設し、対応するのが一般的で、追加投資や運転稼働の増加による電力量の消費など発生します。さらに、電力消費量の増加は、費用だけでなく地球環境保護の観点からも問題があります。社会的に関心が高まっている省エネは、データセンターにおいても喫緊の課題となっているのです。

省エネ、過剰投資、まだまだあるデータセンターの課題

 その他に、データセンターでは、高発熱や高密度化が進むとともに、さまざまな課題が露わになっています。

 データセンターでは、ICT機器の排熱によって局所的に温度が高くなる「ホットスポット」が発生します。通常の空調システムの場合、ホットスポットが発生しても、部分的な冷却ができないためにデータセンター全体を冷却し、そのため、電力消費の無駄が発生します。

 また、空調設備や発電設備の設置場所も限界を迎えています。そうした設備は、データセンターの屋上に集中して設置されていることが多いのですが、そのスペースが不足。屋上のスペースを有効活用するために、どのような空調方式を選ぶのか、屋外設備の設置計画をどうするのか、慎重に考える必要があります。

 サーバーの増加に空調や電源設備の容量が追いつけず、ラックを増やせないという問題もあります。仮に空調や電源設備に余裕があっても、複数のサーバーが設置されたラックによって床荷重が増大。建物の構造上の問題からラックが追加できないというケースもあります。ラックの増設のためには、高効率な空調機、電気設備が求められます。

 サーバーや設備が増えてくると、その管理が複雑になり、どうしても余裕を持った計画が必要になります。それは、過剰な設備投資の原因ともなりますので、データセンターの設備の稼働を適正に管理ができるのかどうか見直す必要もあるでしょう。

 ICT機器の進化とともに、既存のデータセンターではいろいろな課題が生まれています。一方で、空調や電源といった設備も進化。今回紹介したような課題を解決するようなものも続々登場しています。データセンターが抱える悩みを解決するためにも、そうした最新技術を常にウォッチしていく必要があります。

 次回は、これらの課題を解決するデータセンターの未来を見ていきます。

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