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ビジネスコラム

企業動向から学ぶ「TCFD」に取り組むべきポイントとは

2019年9月25日

 前回は、金融の安定化を図るため、気候変動の影響について企業の情報開示を推進する国際組織「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」について紹介しました。近年、TCFDに賛同する企業は増え続けており、金融業のみならず製造業など様々な業界が注目をしています。実際に賛同の声を上げた企業は、TCFDにどのように対応しているのでしょうか。今回は、TCFDの動向に迫るとともに、企業が取り組むためのポイントを探ります。

日本企業も気候変動を意識し始めた

 前回も触れた通り、TCFDは2015年にG20の要請を受けて設立されました。背景には、気候変動が経済に及ぼす影響が無視できないほど大きくなったことにあります。そうしたリスクを認識している企業も少なくないようです。

 ある調査では、気候変動が事業活動に与える影響について質問したところ、日本企業の40%が「生産能力の減少/崩壊」を挙げました。

 例えば、台風や豪雨などにより、製造施設が損傷すれば事業活動が中断する可能性があります。施設が災害を受けなかった場合でも、従業員の被災によって操業がストップするケースも珍しくありません。そうした被害によって製品の部品を製造している企業が1社ストップするだけで、その影響は直接被災しなかった製品のメーカーなどサプライチェーン全体に及ぶ可能性もあるのです。

 屋外での作業が多い建築業界などでは、気温上昇とともに熱中症などによる健康リスクが問題視される中、従業員に何かあった際の損害賠償、医療費といったコストが高まることも予想されます。また、農作物は気温の変化や災害の影響を受けやすいため、そうした原材料の収穫や品質の低下、コストの高騰といった面でも影響があるでしょう。先述の調査では、日本企業の38%が気候変動によるコスト的リスクが増加すると認識しています。

 このように日々高まり続ける気候変動のリスクに対して、TCFDは企業に「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標・目標」について、自社への財務的影響のある気候関連情報を開示するよう推奨しています。

政府が発表した「TCFDガイダンス」とは

 日本企業によるTCFDへの賛同をサポートするため、政府も積極的に取り組みを進めています。

 2018年12月には、経済産業省が「TCFDガイダンス」を公表しています。これは、政府機関が策定したガイダンスとしては世界初のもので、TCFD提言に沿った情報開示を進めるための方法がまとめられています。自動車、鉄鋼、化学、電機・電子、エネルギーという業種別に、開示のポイントが紹介されているのも特徴です。

 また、2019年3月に、環境省も「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」と題した資料を発表しています。こちらでは、TCFDにおける戦略の開示に必要なシナリオ分析の方法が取り組み事例などともに紹介されています。

 2019年5月21日に、経済産業省と金融庁、環境省がオブザーバーとして参加する「TCFDコンソーシアム」が設立。ここでは、企業の効果的な情報開示、開示情報を適切な投資判断につなげるための取り組みに関する議論が行われています。そこで得た知見をもとに、「TCFDガイダンス」の改訂、金融機関が企業の開示情報を評価する際のポイントを解説する「グリーン投資ガイダンス」の策定が進められる予定です。

 さらに、2019年10月8日には、世界の先進的な企業や投資家が集まる「TCFDサミット」の開催が予定されており、TCFDの普及拡大にさらに弾みがつきそうです。

TCFDに賛同するためのポイント

 TCFDの要求に沿って情報開示を進めることで、企業は気候変動に対する取り組みを外部にアピールできます。それには、金融機関をはじめとしたステークホルダーからの認知度向上や対話の充実化につながるといったメリットがあり、近年TCFDに賛同する企業が増えている状況です。

 賛同するためには、まず気候変動について組織のガバナンス体制の中でどのように取り扱っているのかを示す必要があります。取締役会の議題として気候変動が取り上げられていることを記載したり、あるいは、専門委員会の議題として気候変動が取り上げられていることを記載するといった方法があります。

 気候変動に関する戦略を策定する際にあたっては、製品のサイクルを考慮したり、短期、中期、長期という時間軸に分けてリスクとビジネスチャンスを検討する事例がみられます。リスクとビジネスチャンスは、製品やソリューションを具体的に記載している場合もあれば、研究開発費や設備投資・投融資の総額を示し、長期的な観点で開示を行う場合もあります。また、将来的な平均気温上昇の度合いに応じ、複数のシナリオを開示するも企業もあるようです。

 自然災害などによる直接的な被害が予想される企業は、被害を受けた際に最小限にとどめる方法について開示を検討する必要があるかもしれません。ある航空会社は、台風による欠航の影響が経営に与える影響を開示しています。気候変動のリスクについて、日本の大手商社ではフローチャートなどを用いて具体的に管理のプロセスを示しています。

 指標と目標については、温室効果ガス(GHG)排出削減量といったものから、環境問題や社会貢献などを軸にした開示方法など、各社見せ方を工夫しているようです。

 今回紹介したガイダンスあるいは取り組み事例に学ぶことで、気候変動への対応方法が見えてくるはずです。それを行動へと移すことで、気候変動のリスクを低減するだけでなく、脱炭素社会への移行期に生まれようとしているビジネスチャンスも捉えることができるのではないでしょうか。

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