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「省エネ法」が企業に示す判断基準とは

2019年10月2日

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 日本が掲げる、2030年度に温室効果ガス(GHG)削減を2013年度比で26.0%減するという目標を達成するためには、省エネの推進が重要になってきます。特に工場や商業施設、事業所などの事業部門は、日本におけるGHG排出量の6割近くを占めており、目標を達成するためには企業の積極的な取り組みが欠かせません。省エネ法は、そうした企業による活動を促進するために制定されました。省エネ法の動向を追いかけながら、企業と省エネの関係について考えます。

企業に判断基準を示す「省エネ法」

 「省エネ法」とは、企業が省エネに関する取り組む際の判断基準を示すための法律です。正式名称は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」といいます。

 省エネ法で主要な目標となっているのが、「エネルギー消費原単位」の継続的な低減です。エネルギー消費原単位とは、生産に必要な電力・燃料などエネルギー消費量の総量のことです。これを中長期的な観点のもと、年平均で1%以上低減するというのが目標(1%低減)になっています。

 「1%低減」は、全ての企業に義務があるわけではありません。省エネ法で規制対象となっているのは、特にエネルギー消費量の多い業種の企業です。具体的には、工場や病院、ホテル、学校、輸送事業者、エネルギーを消費する機械器具のメーカーや輸入企業、家電の小売事業者やエネルギー供給事業者などが対象になっています。

 また、規制対象となっている企業でも、エネルギーの消費量によって取り組み内容が変わります。エネルギーの使用量が原油換算で年間1,500kl(キロリットル)以上の工場や事業所といった一部の企業には、エネルギーの使用状況や省エネに関する中長期計画の報告が義務付けられます。一方、エネルギー消費量が規定より少なく、報告が義務付けられていない企業は、1%低減を努力目標として取り組むことになります。

 企業が省エネ法に沿った努力をすることは、社会の要請に応えることになります。さらに、エネルギーの消費を抑えることは、コスト削減にもつながるため、企業経営の向上という観点からも意味があります。

内容は時代とともにアップデート

 省エネ法が制定されたのは1979年のことです。

 そのきっかけは、1973年と1979年に日本を襲ったオイルショックです。化石資源を輸入に頼る日本では、石油関連製品の価格が急上昇するなど混乱に陥いりました。その中でエネルギーの安定供給に加え、エネルギーの効率的な利用についても重要性が見直されるようになり、省エネ法の制定へとつながりました。

 制定から40年以上という歴史の中で、省エネ法は社会や経済環境の変化に応じて改正を何度も繰り返しながらアップデートされてきています。例えば、2013年には東日本大震災後に電力需給が逼迫したことを受け、ピークカットやピークシフトなどの取り組みを促すための法改正が行われました。

 こうした改正の中でも、特長的なのが「トップランナー制度」と「ベンチマーク制度」の創設です。

新制度によって企業に取り組むメリット

 1998年の改正で設けられたのが、「トップランナー制度」です。対象となる機器は、当初は電気冷蔵庫、エアコンの3品目に限られていましたが、現在では照明器具、DVDレコーダー、複合機、ガラスなど、32品目まで拡大しています。

 この制度は、エアコンやテレビといった家電製品の省エネ基準を、現在販売されている中で最も省エネの効率良い商品を目標に高めようという制度です。

 2008年には、トップランナー基準の達成度を製品のラベルに示す、「省エネルギーラベリング制度」が導入されました。これによってトップランナー基準を達成した製品は、その省エネ性能を消費者にアピールできるようになっています。

 2008年からは、「ベンチマーク制度」が開始しています。

 ベンチマーク制度とは、省エネの取り組み状況について業種・分野ごとに共通の指標を用いて評価しようというものです。1%低減を補完するために設けられました。

 1%低減では、前年度と比較した成果が評価の基準となります。省エネを始めたばかりの企業は前年度と比べて成果が大きくなりやすいものの、長く取り組んでいる企業は成果が出にくくなりがちです。その中で、企業の中には、省エネに取り組んでいながらも、1%低減という目標が達成できないために、適正な評価を受けることができないというケースもありました。

 べンチマーク制度では、前年度の自社の取り組みと比較するのではなく、業種の中での基準や位置が重要になるため、先のようなケースでも適正に評価することができます。評価指標のほかに、上位1割〜2割の企業をもとに設定された水準も示されます。省エネに取り組む企業は、この水準をもとに自社のポジションを確認したり、中長期的な計画を策定することができるようになっているのです。さらに、ベンチマーク制度の基準をクリアすることで、省エネ補助金を申請する際に有利な評価を受けることができます。

 なお、トップランナー制度の品目やベンチマーク制度の対象業種は、省エネ自体がそうであるように時代とともに変化しています。次回は、そうした変化を踏まえた上で、省エネ法の最新動向として2018年の改正内容とともに、企業との関りについても紹介します。

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