お問い合わせ

NTTファシリティーズ

メールのアイコン

ビジネスコラム

再生可能エネルギーを調達する際に知っておきたい「追加性」

2020年1月22日

Tweet
Facebook

 環境問題に対する意識の高まりに伴い、積極的に再生可能エネルギーを活用する企業が増えています。中には、事業で使用する全ての電力を再生可能エネルギー由来のものに移行した企業もあります。そうした先進的な企業では、自社の調達方法が環境改善にどれぐらい効果があるのかを判断するために、「追加性」という概念を重視するようになっています。今回は、存在感を増す追加性の概要について解説します。

再エネへの投資促進効果を示す「追加性」とは

 追加性(additionality)とは、「再エネ電力や証書・クレジットの購入により、新たな再エネ設備に対する投資を促す効果があること」です。再生可能エネルギーの調達に積極的な企業の中で、重要視されるようになっています。

 再生可能エネルギーは、太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスをはじめ、多種多様なエネルギー源があります。また、それらを調達するための手法も多様化しており、企業の選択肢は増え続けています。

 企業は、そうした調達方法の中からコストや環境に対する貢献度を考慮した上で、自社の目的に合致したものを選択しなければいけません。近年、より環境面を重視した調達方法を選択する動きがあります。消費者や株主などの環境に対する意識の高まっていることを受け、環境問題に対する自社の姿勢をステークホルダーにアピールし、ブランド価値の向上につなげようというのです。

 そこで重要になるのが、企業の選択した調達方法が本当に再生可能エネルギーへの投資を促進し、化石燃料の代替につながっているのかという追加性の観点です。

追加性を調達方法ごとに考える

  企業が再生可能エネルギーを調達する主な方法には、「自家発電・自家消費」「再エネ電力の購入」「環境価値(証書・クレジット)の購入」があります。

 自家発電・自家消費は、自社の敷地内に太陽光発電などの再エネ設備を新たに構築して取り組むため、環境への貢献が最も明確な調達方法といえます。

 ほかの調達方法と比べて構築費などのイニシャルコストは高くなりますが、太陽光発電の導入コストは低下を続けており、年々導入しやすくなっています。さらに、イニシャルコストをかけずに、自家消費に取り組める「PPA (Power Purchase Agreement)」という調達手法も存在します。

 「PPA」は、オンサイト型や第三者所有モデルと呼ばれることもあり、企業は事業者の負担で自社敷地内に太陽光発電の設備を設置してもらい、そこで作られる電力を購入します。企業は、事業者に対して長期的な電力の購入を保証する代わりに、初期構築や保守運用のコストをかけることなく、自家消費に取り組むことができるのです。

 環境に対するインパクトが最も大きい自家発電・自家消費ですが、その発電量は様々な要因に左右されます。太陽光発電の場合は、日射量のほかに設備を設置する面積によって発電量が決まるため、敷地や屋上などの面積が限られる都市部では、業務で使用する大量の電力を全てまかなうのは難しいかもしれません。また、風力発電は風の強い山間部や沿岸部、バイオマスは木材の調達が容易な山間部と、そのほかのエネルギー源も設置場所を選びます。そこで、他の調達方法と組み合わせることが重要になってきます。

 「再エネ電力の購入」は、自家発電・自家消費と比べ、初期構築費用などのイニシャルコストを必要としない手軽な調達方法です。国内では、太陽光や風力、水力などをエネルギー源とした様々な種類の再エネ電気を調達することできます。しかし、追加性については注意しなければいけません。例えば、水力発電の場合は古い設備が多いため、そこへ投資をしても新たにCO₂ 排出量を削減する効果はないとみなされることもあり、追加性という点で課題があります。

最も利用の多い「証書・クレジット」の厳格な審査

 現在、企業が再生可能エネルギーの電力を調達する手段として、最も多く利用されているのが証書やクレジットの購入です。日本で一般企業が購入できるものには、「グリーン電力証書」「J-クレジット」があります。いずれの制度においても、証書やクレジットが根拠もなく乱発されないように、プロジェクトを承認する際には追加性を厳しく評価しています。

 J-クレジットは、再生可能エネルギーの活用や省エネ機器の導入、森林経営などの取り組みで削減・吸収された、CO₂の量をクレジットとして国が認証する制度です。ここでは、原則として「設備の投資回収年数が3年以上」を基準に、追加性の有無を判断します。

 グリーン電力証書は、再生エネ電気の環境価値の部分を証書として取引する制度です。この制度では、「グリーン電力の取引行為が、建設における主要な要素であること」「グリーン電力の取引行為が、グリーン電力の維持に貢献していること」「グリーン電力の取引行為が、当該設備以外のグリーン電力の拡大に貢献していること」という基準のもと追加性の有無を判断しています。

 今回紹介した追加性は、再生可能エネルギーを調達する上で、最も厳しい判断基準の1つです。既に欧米の先進企業は追加性に対応した電力を選択するようになっており、日本企業もその動向を注視する必要がありそうです。

関連する記事

最新のコラムや導入事例を
メールマガジンで配信いたします。
えふ・マガの購読はこちら

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP