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巨大地震に備えるための、長い目で見た取り組み方

2020年9月16日

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 阪神・淡路大震災、東日本大震災と、次々と日本を襲う巨大地震。今後も、南海トラフ地震や首都直下型地震などの発生確率が高まってきているといいます。企業が巨大地震に備えるためにはどのようにすればいいのでしょうか。今回は、巨大地震はいつ発生し、それに対してどのような準備が有効になるのかを探ります。

日本が地震大国と呼ばれる理由

 日本列島周辺は、世界でも突出して多くの地震が発生している地域です。ある調査機関によると、1990年以降に世界で発生した地震の約1割が日本に集中しているといいます。

 日本が「地震大国」なのには、理由があります。地球の表面は、十数枚の岩盤層(プレート)に覆われており、それぞれのプレートはバラバラの方向に年間で数cmという速度で移動しています。そのため、プレートの境界付近では、プレート同士がぶつかり合い、巨大なエネルギーが生まれ、ひずみとして蓄えられています。

 そして、プレートが蓄積されたひずみに耐えられなくなって元に戻るときに、エネルギーが解放され、地震(海溝型地震)が発生します。日本は、4つのプレートがぶつかる世界的にも非常に珍しい場所に位置しています。プレートの枚数に比例して大きなひずみが蓄えられており、多くの地震が発生しているのです。

南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は70%~80%

 今後、発生する確率が高いと考えられている主な海溝型地震としては、南海トラフ地震があります。南海トラフは静岡県から九州の沖合に伸びる巨大な海溝です。広域にわたって甚大な被害をもたらす地震として危険視されていて、地震調査委員会は今後30年以内に発生する確率を70%~80%と予測しています。

 これから日本を襲う巨大地震はそれだけではありません。海溝型地震については、南海トラフだけでなく、日本海溝や千島海溝など将来巨大地震の発生源となりそうな場所がいくつか存在します。

 そのほかに発生が懸念されているのが、内陸型地震です。内陸型地震は直下型地震とも呼ばれ、地層の中にある亀裂である「活断層」がずれることで発生します。今後30年以内に発生する確率が高いといわれている内陸型地震としては、南関東を震源とする首都直下型地震があります。日本には2,000を超す活断層が確認されており、さらに地下深くに多数の未知の活断層が眠っていると考えられています。

巨大地震が発生する日はわかるのか?

 巨大地震がいつ、どこで、どれぐらいの規模で発生することは予測できるのでしょうか?残念ながら、現在の科学の力では、具体的に予知することはできません。SNSなどで「〇月△日に□□地方に巨大地震が発生する」という情報を目にすることがありますが、基本的にはそうした情報に明確な根拠はありません。

 しかし過去の情報から「どれぐらいの周期で地震が発生しているのか」を把握することは可能です。巨大地震には、同じ場所で繰り返し発生する傾向があります。そこで、古文書や地層に残る津波の跡などを調べて発生周期を算定し、地震の発生を推測することができるのです。

 南海トラフ地震の場合、およそ100~150年の間隔で繰り返し発生しています。前回の南海トラフ地震(1944年の昭和東南海地震、1946年の昭和南海地震)から70年以上が経過しており、発生の可能性が高まってきていると推測されています。

最大規模の地震で国家予算を超え200兆円の損害

 巨大地震が発生すると、どのような被害が生じるのでしょうか。西日本に大きな被害をもたらす可能性がある南海トラフ地震を例に考えてみましょう。

 政府の中央防災会議は、最大規模の南海トラフ地震が発生した場合、静岡県から宮崎県にかけての一部地域で震度7、それに隣接する周辺地域では震度6前後の強い揺れが生じると予測。それにより、地震直後の揺れによって62.7 万~134.6万棟の建築物が全壊するとしています。また、関東から九州にかけての沿岸を高さ10m以上の津波が襲うという可能性もあります。

 南海トラフ地震は、超広域にわたって甚大な被害をもたらすため、阪神・淡路大震災や東日本大震災と比べても、非常に大きな経済的な損失が生じると考えられています。予測される最大規模の地震が発生した場合には、被災地における資産などへの被害が約170兆円、全国の経済活動への影響は約45兆円を超えるという試算もあります。日本の国家予算が約100兆円ですから、その倍にあたる200兆円超の損害が出ると予想されているのです。

 非常にショッキングな予想ですが、被害を軽減するための対策も考えられています。例えば、建物の耐震化率を100%まで向上させ、併せて防火対策などを行うことで、被災地の被害額は約170兆円から80兆円にほぼ半減。また、避難の迅速化などに取り組むことで、経済活動への影響は約45兆円から32兆円と、3 割程度減少すると試算されています。

 甚大な被害をもたらす巨大地震ですが、しっかりとした準備があれば被害を軽減することができるのです。

「いつ発生してもおかしくない」という意識へ転換を

 企業が巨大地震に備えるためにはどうすればいいのでしょうか。いつ発生するのからわからないリスクに対し、何をどれぐらいまでやればいいのか、具体的に考えるのは難しいかもしれません。まず取り組みたいのは、「いつ地震が起こってもおかしくない」という認識をしっかり持つことです。地震を起こりうるリスクとしてとらえ、「リスクに対してどう対応するか」の指針を共有することが、被害の拡大防止につながります。

リスクに対する指針は、「事業継続計画(BCP)」を策定・整備することで具体化しましょう。地震がもたらす被害への対応と、平常時への業務回復プロセスをあらかじめ計画・共有しておくことで、事業の早期復旧が可能になります。また、災害が発生したらどう避難するのかを定め、平時から定期的に訓練を実施することも社員の意識統一を図るうえで重要です。

 こうした取り組みはあくまでも一例です。いつ発生するのかわからない巨大地震と付き合っていくためには、今回紹介した日本の状況を理解したうえで、「いつ発生するのかわからない」から「いつ発生してもおかしくない」と意識を転換し、できることから着実にはじめ、長い目で取り組むことが大切なのではないでしょうか。

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