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初の「電力ひっ迫警報」が発令。日本の電力事情における現在と未来

2022年4月27日

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 2022年3月21日、初めての「電力ひっ迫警報」が発令されました。主な要因は地震による発電所の運転停止と気温低下による暖房需要の急増です。今回の発令から見える背景には再生可能エネルギーの導入拡大も関係しているといいます。ここでは日本の電力事情における現在と未来について考察します。

初の「電力ひっ迫警報」発令

 2022年3月21日、経済産業省所管のエネルギー庁が、2012年の制定以来初めてとなる「電力ひっ迫警報」を発令しました。

 電力ひっ迫警報は、正式には「電力需給ひっ迫警報」という名称で、東日本大震災によって電力需給がひっ迫したことを背景に導入された制度です。電力の需給バランスが乱れることが見込まれる場合、事前に節電協力を呼びかけ、停電やブラックアウト(大規模停電)を防ぐのが目的です。発令の基準は、「翌日の電力供給の予備率(余力)が3%を下回ることが見込まれる場合」とされています。

 このタイミングでの警報発令には、主に2つの要因がありました。ひとつは、想定気温が平年より非常に低く、暖房の需要増が見込まれたことです。3月22日の東京は、最高気温が10度を下回る真冬並みの寒さとなり、都内では降雪も観測されました。気温が1℃下がって増える発電量は、大型の発電所1基分に相当すると言われています。

 もうひとつは、3月16日に福島県沖で発生した地震の影響です。福島県いわき市では最大震度5強が観測され、その影響によって火力発電所14基が運転を停止しました。3月22日時点でも、このうち6基が運転を再開できず、電力の供給能力が一時的に下がっていました。

 一時は東京電力管内で需要が供給を上回る状態にもなりましたが、幸いなことに停電は回避され、東北電力管内では翌22日、東京電力管内では23日に警報は解除されました。ただし、節電できたのは目標値の70%ほどだったこともあり、課題を残す結果となりました。

東日本大震災で変化した日本の電力需給バランス

 電力需要ひっ迫警報が制定されたきっかけは、東日本大震災です。2011年3月の東日本大震災では、発電所が運転を停止したことで電力供給量が約2,100万kWまで減少し、東京電力管内では計画停電も実施されました。

 こうした電力需給の変化は、エネルギーの在り方における価値観へも影響を与えています。環境省が行った意識調査によると、東日本大震災を経て、「節電対策」「省エネ設備の導入」「太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入」などに取り組んでいると回答した割合が大きく増加しました。

 ところが、この再生可能エネルギーの導入拡大が、電力ひっ迫を引き起こす原因のひとつになっていると言われています。

 日本政府は現在、地球温暖化をはじめとする環境問題に対応するため、温暖化ガスを発生させない再生可能エネルギーの導入拡大を進めています。2021年に策定された「第6次エネルギー基本計画」では、太陽光・バイオマス・地熱・風力・水力など再生可能エネルギーの割合を、2019年の18.5%から2030年度には44%に引き上げる目標を掲げています。再生可能エネルギーは、今後日本の電源構成の主力となっていく見込みです。

 電力需給ひっ迫は、需要に対して供給が不足することで起こります。基本的に、電力は貯めておくことができず、使用される電力量を予測して、計画的に発電され供給されています。太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギーは、時間帯や天候などによって発電量が左右されるため、あらかじめ供給量を考慮する必要があります。

 2022年3月のような急激な天候の変化があると、影響を受けやすい再生可能エネルギーは発電量が少なくなり、増えた需要を満たすことができなくなるのです。そのため、不足する電力は他のエネルギーを用いた発電で補わなければならず、今後、日本の電源構成の主力となる再生可能エネルギーは、電力需給の観点からみると安定性の確保を必要としています。

カーボンニュートラル実現と電力安定供給の両立

 日本政府は、2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル2050」を掲げています。地球温暖化対策のために、石油や石炭、天然ガスなど炭素由来のエネルギーの利用割合を縮小させ、再生可能エネルギーの割合を拡大させていくのは、日本だけではなく世界各国共通の目標になっています。電力の需給バランスを安定化する仕組みづくりは、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が今後も拡大することを前提に取り組まなければなりません。

 需給バランス安定化に寄与する取り組みの一つとして挙げられるのが、自律分散型発電です。これは、いままでのように大規模な発電所で集中的に発電を行って電力を供給するのではなく、さまざまな再生可能エネルギーによる小規模発電と、地域をカバーする電力供給網(地域マイクログリッド)を組み合わせて電力を相互融通し、ICT技術によって電力供給を最適化するものです。

 また、自立分散型発電は、自然災害など非常時の停電対策としても有効です。非常用発電機や蓄電池、さらにEVへの充電/放電を組み合わせることは、災害時にも電力インフラを維持できる強靱さ(電力レジリエンス)の確保につながります。

 安定した電力供給は、持続可能な社会を実現するうえで重要な役割を果たします。一方で、再生可能エネルギーの導入も、カーボンニュートラルを達成するための欠かせない要素です。この2つを両立できる仕組みを作り、中長期的な視点で考えることが、日本の電力事情に明るい未来をもたらすのではないでしょうか。

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