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サステナブルな社会を築く「サーキュラーエコノミー」とは

2022年7月6日

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 「サーキュラーエコノミー(循環経済)」とは、製品や資源を効率的かつ循環的に利用して廃棄物の発生を最小化しようとする考え方です。現在、持続可能な社会の実現に向けてさまざまな業種で取り組みがはじまっています。循環経済を意味し、新たな指標となる「サーキュラーエコノミー」という概念の生まれた背景や企業に及ぼす影響などを解説します。

これまでのリサイクルでは、環境汚染も廃棄物の発生は止まらない

 1950年代以降の経済活動は、大量生産・大量消費を前提としており、環境汚染や大量の産業廃棄物が発生するなど環境への負荷が社会問題となっていました。これらに対応するため、日本でも2000年より「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」を推進する動きが活発化し、環境に配慮した生産や消費活動が浸透するようになりました。

 しかし、そういった活動が定着してもなお、環境汚染や産業廃棄物の発生は止まらず、新たな対策が求められていました。そうした状況を反映し、より環境負荷を抑えるために考えられた概念が「サーキュラーエコノミー(循環経済)」です。

 サーキュラーエコノミーは、製品や素材、有限な資源をできるだけ長く活用・循環させ、材料の消費や製品の廃棄を最小限に抑える経済活動です。廃棄物を抑制する製品・サービスは新たな市場の創出につながると注目を集めており、あるコンサルタントの見立てでは、2030年までに約500兆円の市場規模になると予測されています。

 2022年に開催された世界経済フォーラムでまとめられた「グローバルリスク報告書」では、今後10年間の懸念事項のトップ3に「気候変動への適応(あるいは対応)の失敗」「異常気象」「生物多様性の喪失」が挙げられました。経済活動による環境負荷を放置すれば、いまの社会を維持ができなくなるという危機意識は世界的に共有されており、サーキュラーエコノミーの実現は新たな処方箋として効果が期待されています。

「線型」ビジネスから「循環型」ビジネスへ

 2000年ごろから日本で実践されてきた、ごみを減らし、資源を再利用し、再活用する3Rとサーキュラーエコノミーとは、「製造から廃棄までの枠組み」に対する発想という点で異なっています。

 従来の製品製造は、「原料→生産→消費→廃棄」というリニアエコノミー(線型経済)の発想のもとに成り立っています。3Rでは消費後に一部の製品をリサイクルし、廃棄物を減らすという考え方で再利用を促しました。しかし、基本的な考え方は廃棄物が出ることを前提に、それをどう抑制するかという点にあり、製造から廃棄までの直線的に進む枠組みはそのまま維持されます。

 一方、サーキュラーエコノミーは、「原料→生産→消費→リサイクル→原料」という循環型を前提にした生活やビジネス活動の枠組みです。従来のように「廃棄物が発生してしまうから減らす、それをどうするかを考える」といった発想よりも、廃棄物自体を新たな原料にするなどして「そもそも廃棄物が発生しないように製品・サービスの開発を行う」という発想をベースとしています。

 つまり、サーキュラーエコノミー実現のためには、製造やサービスのサイクルを循環させるさまざまな工夫や取り組みが必要になります。例えば、日本のペットボトルは、資源として循環させ、再利用することを前提に製造されています。そのため、ボトル製造における無色透明化の統一にはじまり、ラベルやキャップの分別向上などの改良を積み重ねてきた結果、リサイクル率は85.8%と世界でもトップレベルと言われています。

 ある印刷会社は、使用済み紙おむつに水溶化処理を施してパルプ、プラスチック、高吸水性ポリマーとして再資源化しています。現在は主に建築資材や固形燃料として利用していますが、今後は再資源化した紙おむつをすべて製品の材料として循環利用できるシステムを展開する予定です。

 こうした取り組みの重要性は国や省庁も認識しており、経済産業省が策定した「循環経済ビジョン2020」では「すべての産業は資源効率向上の重要性を理解し、循環型ビジネスモデルへ移行する責務がある」とし、業態に応じた循環型のビジネスモデルのトータルデザインが求められるとのビジョンを示しています。

サーキュラーエコノミーに適したビジネスが生まれている

 サーキュラーエコノミー実現のためには、製品開発時の上流工程段階から、どのように無駄・廃棄を減らせばよいか、どのようにして再利用を前提としたサービスを設計するかという発想が求められます。そのため、使用後に消費者から回収する仕組みや、調達・製造から販売までサプライチェーン全体で取り組める体制を整えるなど、従来の事業内容とは異なる制度設計を行う必要があるかもしれません。

 そのような中、既に取り組みを始めている業界・企業から具体的な製品やサービスも出始めてきています。例えば、アパレル業界では、和紙糸やオーガーニックコットンを用いたシャツ・スウェットパンツや、土に還る素材を活用した衣類などが開発されています。また、古着を回収して農園で土に還す活動なども行っています。

 ある化学企業では、炭素繊維強化プラスチックの端材や使用済み加工品をリサイクルし、新たな部品材料として再利用する設備を立ち上げました。当面は自社グループ内で再生・再利用を行う予定ですが、将来はリサイクルした材料の一般販売も検討しています。

 その他に、製品を新たに製造するのではなく、シェアリングサービスとして複数の人で融通するというのも廃棄の抑制につながる効果的な方法です。注文住宅を手がけるある工務店では、店舗向けに木製家具をリースするサービスを展開しています。店舗のリノベーションで発生する木製家具の廃棄品を、他の店舗へリースをする取り組みを行っています。また、すでに普及が進んでいる例としては、自動車を共有して利用する「カーシェアリング」があります。相乗りによって移動費を節約できる「ライドシェア」は、免許を返納した高齢者の移動サポートという点からも地域貢献に役立つと言われています。

 サーキュラーエコノミーは、投入した原材料を循環して再利用するため、「コストを長期的に最小化できる、効率的なビジネスモデル」という側面も持っています。今後、さまざまな製品やサービスは、「原材料を循環的に再利用できないか」という考え方に基づき、新たな着眼点と手法によって開発や設計などが行われるようになると思われます。また、日本ではすでに3Rの取り組みが実践されていることから、サーキュラーエコノミーという考え方は、市場、消費者ともに抵抗なく受け入れられるでしょう。環境負荷の低減と経済成長の両立を持続的に実現する社会を作り上げるために、大きな役割を担っていくサーキュラーエコノミーという観点を、自社のビジネスや製品にも盛り込んでみてはいかがでしょうか。

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