5回にわたり、データセンターを巡る環境の変化と抱える課題、そしてその課題解決への取り組みを紹介してきました。今回は、データセンターが進化することで、私たちの生活やビジネスにどのような影響を与えていくのか考察します。
デジタルトランスフォーメーションの到来を支える進化
生活やビジネスにおけるICTの活用、それを陰で支えているのがデータセンターです。
例えば、私たちはインターネットを使い、買い物をするときには商品の評価や最安値のものを探し、出かけるときには地図や経路を調べ、といったことを当たり前のように行っています。
近年では、AIを搭載したスピーカーでテレビや照明などの家電が操作できるようになったり、アプリで自分のすぐ近くを走るタクシーを予約できたりと、私たちのくらしはますます便利になっています。そうしたことができるのも、大量のデータを保管・管理するデータセンターの存在があってこそなのです。
そんなデータセンター自体も、技術の発展に合わせて進化しています。
データトラフィックが増え続ける中で、データセンターの内部では、ICT機器の高密度化や高発熱化、交流から直流へと複雑な変換で電力ロスが発生する給電方法といった新たな課題が浮上。課題に対応するため、より効率的な空調システムや給電システムが導入されるようになっていることは前回までに紹介してきました。
データセンター内の設備がより効率的なものへと進化することで、デジタルトランスフォーメーションの到来は一層早くなることでしょう。少し前までは、映画や小説でしかありえなかったサービスが次々と誕生している背景には、進化するデータセンターの支えがあるのです。
データセンターの恩恵で企業に利益!?
データセンターの恩恵は個人にだけではなく、日本の未来も明るく照らしそうです。
近年、日本市場では労働人口の減少が大きな問題となっており、このまま手をこまねいていれば日本経済は右肩下がりになるばかりです。その問題の救世主になると期待されているのもICTの進化です。
ある調査結果によれば、さらにICTの活用が進むことで、利益率向上やコスト削減、生産性向上、生産・運用時間の短縮、顧客獲得時間の短縮といった一連の項目を実現することにより、2021年までに日本のGDPを約11兆円押し上げると予測しています。
国内では、資料作りや事務用品の発注を半自動化したり、遠隔会議システムを使ってミーティングに費やす時間を短縮したりと、先進的なICT活用事例が次々と登場しています。こうした事例をみると、ICTの活用がいずれGDPに良い影響を与えるというのもうなずけます。
最新データセンターは地球環境にも貢献
2016年に温暖化対策の枠組み「パリ協定」が発効し、世界規模で省エネ対策が加速しています。その機運は、データセンターでも高まっています。
社会の要請に応えるため、データセンターに先進的なファシリティを導入する企業も登場。ある大手ソフトウェア企業は、2017年、アイルランドに新設した風力発電所の電力をデータセンター運営に利用しはじめています。
さらに進んだ例では、アメリカの大手ITベンダー企業は、データセンターを含めた自社で使用する電力の100%を再生可能エネルギーでまかなうことに成功しています。こうした再生可能エネルギーの活用は、企業にとってエネルギーコストの面でも大きな意味があるでしょう。
データトラフィックの増加に合わせて、ICT機器の電力消費量が増え続けている一方で、再生可能エネルギーや自然の冷気を活用し、電力削減という社会の要請に応えるデータセンターも現れています。
効率的なファシリティの導入や再生可能エネルギーの導入などによって、データセンターの電力削減が進めば、地球環境の保全にも貢献する持続可能な社会の実現にまた一歩近づきます。
このような豊かな未来を絵に描いた餅でなく真に実現するためには、デジタルトランスフォーメーションを支えるデータセンターの進化が重要になるのです。
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