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ビジネスコラム

フロー型からストック型へ!日本が変わる、建物の運用も変わる

2019年2月13日

 日本は、時代の変化に合わせるように新しい建物をつくってきた「フロー型」から、1つの建物を長く使っていこうという「ストック型」へ、変貌を遂げようとしています。江戸時代から高度経済成長期へと続いてきた、「スクラップアンドビルド」という手法に終わりを告げ、今、建物の運用に何が求められているのでしょうか。建物運用の過去と現在を探ります。

日本の建物は平均寿命が英国と比べ半分以下

 建物という側面からみると、これまでの日本はフロー型だったということが言えます。

 経済活動では、一定期間に資本が流れる量をフロー、貯まった量をストックといいますが、今回取り上げるフロー型とは、建物を次から次へとつくり出し、より多くの資金を循環させようという考え方のことです。そこでは、少しでも老朽化した建物はすぐに壊し、新しい建物を生み出そうとするスクラップアンドビルドという手法が取られてきました。

 その影響で、日本における建物の平均寿命は、欧米と比べて非常に短くなっています。国土交通省の資料によると、建物がつくられてから消失するまでの平均期間は、米国が55年、英国になると75年もあるのに対して、日本はわずかに30年しかありません。

 なぜ日本は、欧米と比べてこれほど極端に建物の平均寿命が短いのでしょうか。そこには、文化や経済などの歴史的な背景の違いがあります。

災害都市・江戸で育まれた「スクラップアンドビルド」

 日本の伝統的な建物は、主に木でつくられてきました。一方、欧米の伝統的な建物は石やレンガ。建築材料からして、日本と欧米の建物とは異なります。そうした伝統的な違いに加え、日本では江戸時代になると「スクラップアンドビルド」の思想が強まります。

 江戸の人口は、寛永 11 年(1634)の段階で約 15 万人でしたが、享保6年(1721)には総人口が約 100 万人に達したと考えられています。江戸は、当時としては世界最大級の都市に成長したのです。しかし、人口の増加にともなって、主に木でつくられた家が密集したため、火事に弱い都市にもなってしまいました。

 3年に一度、江戸中を焼きつくす大火が発生。中でも、1657年の「明暦の大火」は最も被害が大きく、市街地の大半が焼け、天守を含む江戸城までもが消失してしまいました。

 江戸を襲ったのは火事だけではありません。1855年に発生したM7クラスの「安政江戸大地震」をはじめ、大地震も頻繁に発生しました。そうした災害によって、江戸時代の建物は破壊されては、つくり直すというスクラップアンドビルドを何度も経験してきたのです。

 そのため、当時の一般的な町民の住居は、火事などの災害によって壊れるという前提にあるため、安普請なものが一般的だったといいます。家が簡素だったため、火事の時に壊しやすく、火が隣家に燃え移ることを防ぎやすいというメリットもあったようです。

経済成長に合わせて加速、そして減速へ

 話は江戸時代から一気に飛びますが、日本におけるスクラップアンドビルドへの傾斜は、1954年からの高度経済成長期に入るとさらに加速します。

 日本経済の著しい成長に合わせるよう、土地の値段も上昇。さらに好景気の中で、たくさんのお金が循環していた時代でした。土地や建物は投機の対象となり、建物が少しでも古くなると、法定耐用年数を迎える前でも破棄し、新しく建設されるようになりました。

 しかし、1990年代に入り、日本の経済成長が緩やかになると、風向きが変わります。日本では、景気の悪化によって資金の循環が停滞し、それまでと比べて取り壊しや新築にかかる費用の捻出が経営を圧迫するようになっていったのです。

 1990年代の後半になると、1997年に京都議定書が採択されるなど、社会の環境に対する関心が急速に高まっていきます。その中で、大量のゴミを出す建物の廃棄にも配慮が求められるようになりました。

 このように、フロー型が限界を迎える中で、日本は「ストック型」へと徐々に移行していきます。

50年後を見据え、維持管理の悪影響を最小限に

  建物の観点からみたストック型とは、建物をできるだけ長く使っていこうという考え方のことです。

 そこでは、フロー型のように、古くなった建物をすぐ廃棄して、新しい建物をつくっていくのではなく、1つの建物をできる限り長期間にわたって使用することが求められます。

 建物を長く資産として残すことで、少しでも壊れたらつくりかえるという従来の運用では増えがちなコストを抑えることができます。さらには、廃棄物の縮小、資源・エネルギー消費の削減にも寄与するため、環境負荷の軽減という点で社会に貢献することも可能です。

 ストック型への移行は既にはじまっており、企業はそれに順応していかなければいけません。しかし、建物を長期間にわたって運用する上で課題もあります。それが、建物の老朽化です。

 1964年に開催された前回の東京五輪を契機に、日本では首都高速1号線をはじめさまざまなインフラや建物が建設されました。今後数年間で、建設後50年以上経過する建物の割合が一気に増える見込みとなっています。

 建物の老朽化は、いくつもの問題を複合的に発生させます。建物の劣化が進行したり、設備の故障が頻発したりするようになり、その分修繕・改修の費用も増加していきます。さらに、建物や設備の衛生面や機能性が損なわれれば、利用者の満足度を著しく低下させる恐れもあるのです。特に複数の施設を保有する企業や自治体にとって、それらの影響は甚大です。

 老朽化に対応するためには、トラブルが起きる前に先手先手で対応していかなければいけません。2020年に向け、日本各地で建設ラッシュが続いていますが、建設されたばかりの建物でさえも50年後、60年後という先を見据えて、今から中長期整備計画をもとに準備を進める必要があるのです。

 日本をストック型へと移行させるためにも、企業や自治体の多拠点運用を最適化するためにも、有用なのが「ファシリティマネジメント」という手法です。次回は、土地や建物のパフォーマンスを最大化し、収益性の向上を図るファシリティマネジメントの魅力について解説します。

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